クリエイターインタビュー|沼田 佐和子さん(中編)
早稲田大学を卒業し、編集プロダクションやフリーランスで活動した後、現在は月刊カフェラテで主にライティングの仕事をしている沼田佐和子(ぬまた さわこ)さん。仕事と子育ての両立や被災地復興への思いについてお話を伺いました。
-ちょっと話が戻りますが、コピーライターになりたいと思ったきっかけを教えていただけますか。子どものころから読んだり書いたりするのが好きだったとか?
本は好きでしたね。それと、母が小学校の先生だったので、作文はたくさん書きました。
-苦痛ではなかったですか?
最初は苦痛だったんですけど、書けるようになるにつれ、表現できることが楽しくなっていきました。小学校4年くらいまでは言われるからやっていた感じだったんですが、「私、こういうの得意だ」って気づいたら、文章でいろいろ表現することがおもしろくなっていったんです。
-何かきっかけはあったんでしょうか?コンクールで入賞したとか。
賞は結構もらいましたね。先生(母)が教えるので、先生が審査するコンクールでは入賞するんです(笑)。
-ストーリーを考えたりとか、小説を書くような創作もしていましたか?
お話を考えたり、普段の生活をお話風にアレンジしたりということは、小さな頃からやっていました。文学少女と言えば聞こえはいいですが、まあオタクですよね。古典の授業が好きで、日本文学をやりたいと思って早稲田大学に進学しました。
早稲田大学って何でも自由にやらせてくれる学校で、万葉集から大正文学くらいまで幅広く学んでいました。卒論は「『愛』という概念が時代を経てどのように変遷してきたか」というテーマで、キリスト教の流入、生活水準の向上、家族制度の確立などにより恋愛や結婚の捉え方がどのように変化し「愛」という概念が醸造されてきたか、ということを書きました。
-研究者になろうとは思わなかったんですか?学者で食べて行くのも難しそうですが。
とにかく本をつくりたかったので、研究者は考えませんでした。出版社や新聞社を受験したんですけど就職氷河期で、雑誌が次々廃刊されていた時期でもあったので、そういう会社には「チョー頭いい人」しか入れなかったんです。
-でも早稲田ですよね。(笑)
早稲田はピンキリなんです、本当に(笑)。
-就職前にご出産されたんですよね。
はい、私はシングルなんですが、子どもが1歳になり就職を考え始めたときに前の会社の求人があり、採用していただきました。最初の頃は、子育てしながらでご迷惑をおかけしまくっていました。
-お子さんは今おいくつですか?
小学校4年生です。2人で暮らしていますが、実家で預かってもらうことも多いです。具合悪いときなどは早く帰るようにしていますが、それ以外は自分のことを自分でしてくれるようになったので楽になりました。思いきり仕事できるようになったので「たまに帰ってくるお父さん」みたいな感じになってますけどね。
-月並みなことをお聞きしますが、お子さんは寂しがりませんか?「まあ、そんなもんだ」と思っているかもしれないですけど。
私と2人きりだったらかなり寂しいと思うんですけど、ありがたいことに両親がすごく可愛がってくれています。もちろん、その時の環境によってやり方は変わってくると思いますが、母親であっても基本「やりたい仕事をやる権利」はあると思うんです。この業界も男社会ですが、できるだけ諦めたくないんですよね。
-「子どもの世話はお母さん」と思っちゃってる人は、まだまだ多いですよね。
娘が大人になる頃には、「女の子にはこういう仕事が向いている」とか、性別で職業を選ぶようなことがなくなればいいなと思います。仕事を頑張っているのは、私の姿を見て「こういうのもありなんだ」と気づいてほしいからでもあるんです。…こういうことをいうと、家族から叱られそうですが(笑)。
-仕事をセーブするという発想はなさそうですね。
働き始めた頃はセーブしてましたよ(笑)。子どもが小さいうちは、お母さんじゃないと寝かしつけられなかったりすることもあるから、前の会社では、私だけ定時で18:30に帰っていました。でも、持ち帰ってきっちり仕事をしても「子育てしながらだとこの仕事は難しいでしょ」と言われたり、保育園に迎えに行っても「なんでそんな遅くまで仕事してるの」と言われたり落ちこむことも多かったです。
「そんな働かなくていいじゃん、ママ」って言われて、「そうだね」って思うときもありますが、それでもやっぱり仕事がしたいんです(笑)。「このコピーダメだったな」とか「この仕事失敗したな」っていうのをなくしていきたい。
-「どうしてもダメだ」っていう仕事もありますか。
あります。もう見たくない記事もあるし、企画書を書きながら「私の器じゃない」と思うこともあります。今はいいアイデアが浮かんでも「回すスキルがない」とか「回せる人材が周りにいない」とか思うことあるんですが、私がもっとできるようになれば人も集まってくるし、きっとできるようになるはずだと信じて頑張っています。思いついたことはやりたいし、できないことはクリアしたいですから。
-クライアントさんの反応もやっぱり気になりますよね。
クライアントのものをつくる仕事なので、いくら自分がいい提案だと思っていてもクライアントにNOと言われらダメなんです。クライアントに「この人がつくったものならいい」と言ってもらえるような人になりたいですね。
-いわゆるブランドですね。
ブランド戦略、考えないといけませんね。例えば、名前の知られたコピーライターさんの書いたコピーを突き返すクライアントって、なかなかいないと思うんです。コピー自体がいいのはもちろんですが、コピーライターとしての「格」みたいなものがあるというか。
-聞いちゃっていいですか?いつも赤い服着てるのは、ブランド戦略ですよね。
恥ずかしい(笑)。私、赤着てます(笑)。それもありますが、業界的にはまだ扱いが小娘なので、小娘なりに頑張っているところはアピールするようにしてます。
沼田 佐和子
コピーライター&ディレクター。広告やPRの企画制作、情報誌や大学案内、パンフレット等の制作を手掛ける。