クリエイターインタビュー|沼田 佐和子さん(後編)
早稲田大学を卒業し、編集プロダクションやフリーランスで活動した後、現在は月刊カフェラテで主にライティングの仕事をしている沼田佐和子(ぬまた さわこ)さん。仕事と子育ての両立や被災地復興への思いについてお話を伺いました。
-さて、もういちど仙台についてお聞きします。「仙台のすごい人」について教えてください。
第一線で活躍している人たちがいっぱいいて、おもしろいですよ。デザインでもコピーでも、パッと見て感動するものをつくれる人は仙台にもいます。数は東京に負けますが、質は劣らないと思います。ただ、そういう人たちが集まる場所やデータベースがあるわけではないので、意識して人脈をつくらないといい人に出会えない、ということはあるかもしれません。
-東京で働きたいと思うことはありますか?
ありますね。仙台のクリエイターって大体知り合いなんですが、仕事を互いに取り合うのは、正直あまり気持ちのいいことではないので。
-大きな仕事は、代理店にお願いしてしまいがちです。クリエイターさん個人に直接発注できればいいんですけどね。
たくさんの人が関わる仕事は代理店さんと一緒にやるという選択がベストだと思います。代理店さんがいるからいい広報になっているということもたくさんあります。私たちが知らない広報ツールをたくさんストックしているのが代理店さんですから、「何をしていいかわからない」時はまず、相談してみるのがおすすめです。広報、広告はチームワークなので、どこが入口でも、結果同じ体制で仕事することになると思いますよ。
-大いなる野望ですね。
フリーランスでも会社員でも、仕事は名前についてくるものだと思っています。商工会議所青年部のメンバーとして就職を控えた学生の相談を受けたときも「制作会社に就職する」ではなく、「デザイナーになる」「コピーライターになる」という気持ちで就職しないと生き抜けない、仕事は与えられるんじゃなくて獲りにいくものだ、という話をしています。
-仙台だからこそやってみたい仕事はありますか?
復興関係の仕事です。すでに宮城県さんからの仕事をやらせていただいていますが、もっといろいろやってみたいです。
さまざまな視点で報道されてきた被災地に再び目を向けてもらうためには、どうすればいいか。この問いからはじまり、いろいろ悩むこともありますが、クリエイティブの力を活かしながら、伝わるものを作っていきたいと模索を続けています。
-タレントの方々って「自分たちが率先して被災地のことを語っていかないといけない」とおっしゃる方多いですよね。
「自分の影響力を上手に使った伝え方は、自分たちにしかできない」とみなさん思ってくれていて嬉しいですよね。
-言葉は悪いですが、「復興需要」はある意味東北にとってチャンスでしたよね。
「被災地は最先端の過疎地」という言葉がありますが、緩やかに下降していたところに震災が来て、一気に弱体化してしまったのが今の東北だと思うんです。でもそれは、これからの日本の指針になる可能性も秘めているということだと思います。
私は生まれも育ちも名取市なんですけど、地元が好きじゃなかったし、地元の閖上(ゆりあげ)のことも「何?このムラ社会」って思ってました。でも震災後は「名取頑張れ」って気持ちが自然と沸いてきました。変な話ですが、復興を応援する記事を書けるのは、震災を経て、東北を客観的に見られるようになったからなんです。
-今後の展望について教えてください。
理屈を超えて「これいいじゃん」と言われるものをつくれるようになりたいですね。
-「誰が見てもいいものはいい」という境地があるんですね。
クリエイターってみんな「自分がいいと思ったものが受け入れられない」という壁にぶつかると思うんですけど、そういうときって、きっと作品自体のパワーが足りてないんです。クライアントの「あんなのつくってほしい」というところを超越して絶対的にいいものをつくれるレベルまでいきたいですね。
-求道者の話を聞いているみたいですね。ストイック。
みなさんそうだと思いますよ。私は言葉として外に出しますけど、みなさん言わなくても考えていることは同じだと思います。
-今日お話を伺って、記事の読み方が変わりそうです。今までいかにさーって流して読んでたか・・・。
いかにその「さーっ」というのをなくすかっていうことですね。基本、広告って読まれないものなので、どう見せるか、読ませるかが勝負なんです。広告記事も読んでもらえるようなクリエイターになりたいです。
取材日:平成29年2月7日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)
構成:工藤 拓也
沼田 佐和子
コピーライター&ディレクター。広告やPRの企画制作、情報誌や大学案内、パンフレット等の制作を手掛ける。