クリエイターインタビュー|佐藤 悠さん(後編)
「やりたいことに忠実でいたら、それが仕事になってくれた。」という佐藤悠さん(さとう ゆう)さん。半ば必然的にデザイナーになられた佐藤さんのお仕事、そしてデザインに対する姿勢などについて、お話を伺いました。
―仕事のやりがいはどういったところに感じますか。
仕事は、クライアントも含めた一つのチームとして進めていくものと考えています。なので、一つの仕事が終わった後に、また次のお声掛けをいただけたときは、それがうまく機能できたのだなと感じますし、ご満足いただけたのかなと思えるので、そういった手応えを感じられるところは、やりがいにつながっている気がします。
―最近のお仕事でうれしかったことはありますか。
東北大学の「先史のかたち」という土器の企画展示で、ポスター兼用のフライヤーを制作させていただきました。土器を学術的な枠組みからはずして美術品としてもじっくり見ていただきたいという趣旨の展示で、展示用の什器もオリジナルで作られたということだったので、フライヤーはその什器をモチーフに立体的なデザインにしました。完成したフライヤーをお届けした時に、みなさんがわぁって歓声をあげて、すごく喜んでくださって。それがとてもうれしかったですね。
―フライヤー制作の打ち合わせには時間をかけられたのですか。
フライヤーも全体の企画の一部分なので、制作のための打ち合わせだけではなく、どういった展示にしていくかを検討する段階から、打ち合わせに参加させていただきました。言語化できていない状態からみんなでもんでいく過程に加わることで、私も企画の方向性をくみ取りやすくなりますし、制作には欠かせない工程だと思います。
―仕事をしていく上で、難しいと思うことはどんなことですか。
例えばデザインのお仕事であっても、どんな効果を得るためのデザインなのかを考えて、それをクライアントと共有して進めていくのですが、なかなか納得していただけないこともあって。それは私のプレゼンの能力であるとか、言葉にして伝えるスキルが足りないためだなと感じます。
―言葉で説明するって難しいですよね。
なので、モックアップをつくって、実際に見ていただくようにしています。何案かつくっていくと、「こっちのこういうところが気に入らないから、こっちの方はもうちょっとこうしたい」とか、そういう比較もできるので、具体物やもしくはそれに近いサンプルを持っていくようにしています。
―それでも最後まで納得してもらえないことはありましたか。
もちろん修正や要望をいただくことはありますが、どうしてもだめだったという経験はありません。事前にヒアリングするのを大切にしていたり、つくる前に方向性やビジョンをしっかり共有するようにしているので、防げているのかもしれないですね。
―ヒアリングの段階がかなり大事なんですね。
そうですね。デザインというと、表側の事だけだと思われがちですけど、デザインすること自体がどういうものなのかを理解することが、デザインにはすごく大切で。例えば、「このお茶をもっと売りたい」という課題があったときに、「なんで今売れてないのか」の分析が大事になるんです。パッケージを変えたからといって売れるというものではなくて、お茶そのものの味だったり、ターゲットや価格の設定だったり、パッケージ以前に潜んでいる問題があったりするんです。そこを共有して、「パッケージを変えると課題のこの部分が解決しますよ」という認識を持っていただいた上で進めていくようにしています。なので初回の打合せは少し長くなることが多いですね。
―デザインの中でコンサルのようなこともされているのですね。
デザイナーの方は皆さん、そういうことも含めてデザインをされているのだと思います。
―最初に必ずクライアントに確認することは何ですか。
とても基本的なことですが、予算と納期は絶対ですね。内容自体は、納得いくまで何度でもやり直しが可能だと思うのですが、その二つを外してしまうと、そもそもやっていること全てが無駄になってしまうので。
―仙台にあったらいいなと思う場所はありますか。
劇場とか、美術館とか、そんなに大きいものじゃなくてもよいですが、そういう文化施設が、都市の規模に対して少ないのではないかと感じているので、もっと気軽に文化を吸収できるような場所があるといいなぁと思います。
―そういった場所にはよく行かれるんですか。
休みの日に、アートを見たり、音楽を聴きに行きます。そういうことがすぐ仕事に活かせるとは限らないですが、いろいろなものを見聞きするのは、何かを作っていく上ですごく栄養になるというか、ためになるので。
―先ほどおっしゃった、気軽に行ける文化施設というと、例えば?
勝手に思ったのは、仙台駅前の大規模商業施設が閉店になりましたが、そこが劇場とか、市民が使える総合的な施設になったらいいな、と。アクセスのいい場所にあることって、年配の方にとっても大切だと思うので。駅周辺は、Zeppもなくなっちゃいましたし、あの辺りに何か大きい総合施設があると魅力になるかなと思います。
―行政でも文化振興に取り組んでいますが、他にどんなことがあるといいですか。
例えば、メディアテークもいろいろ活用されていますが、もっともっと活用できるような気もするし、メディアテークと同等の競合するような施設が2、3あってもいいなと思います。そこを使って何か素敵な体験ができるとたのしいのではないかと思います。インタラクティブなものの方が、多くの方も興味を持ちやすいのではないでしょうか。
私自身も、デザインやクラフトショップの仕事などを通して、微力ではありますが文化をたのしんでいただけるよう貢献していきたいと考えております。
―最後に、クリエイターを目指している方たちへメッセージをお願いします。
どんなお仕事でもクリエイティブな面というのはあると思うので、一つの見え方にとらわれないで、それぞれの力を発揮してたのしんで取り組んでいただけたらと思います。
取材日:平成29年6月13日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)
構成:岡沼 美樹恵
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佐藤 悠
[専門]グラッフィクデザイン、アートディレクションなど。
[最近の仕事]第3回 国連防災世界会議 公式ロゴマーク・デザイン、同会議パブリックフォーラム「東北防災・復興パビリオン」の制作。東北大学考古資料展示「先史のかたち ― 連鎖する土器群めぐり」展グラフィックツール。また一般企業や商業施設などのCI、ロゴおよびグラフィックツールのデザインなど。
[経歴]武蔵野美術大学卒業。せんだいスクールオブデザイン(東北大学・仙台市協働事業)修了。
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