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クリエイターインタビュー|鈴木 啓示さん(前編)

小売に加え、飲食店などへの生け込み、店舗ディスプレイやイベント装飾などさまざまな花のコーディネートを手がける、国分町の花屋florico(読み:フロリコ)代表の鈴木啓示さん。平成28年度クリエイティブプロジェクト「花降る街、仙台」の副代表としても活躍するなど、従来の花屋の枠にとらわれない活動を展開している鈴木さんにお話を伺いました。

―OPEN TOWNの佐藤早紀さん(過去のインタビュー記事はこちら)から紹介いただいたんですが、佐藤さんとはどういったつながりなのでしょうか?

クライアントの美容師さんに紹介していただいたんです。以前、美容室の店舗内装で、大きな木にドライフラワーなどを飾ったディスプレイをつくったことがあるんですが、それを見かけた早紀さんが気に入ってくれて。お仕事としては、2016年の1月に早紀さんがハイカラ.Hとして仙台フォーラスで開催したイベント(※)のディスプレイの製作が最初ですね。

イベント会場の様子。白樺の木にドライフラワーをあしらった装飾(写真2枚目中央)が鈴木さんの手がけた作品

平成27年度クリエイティブプロジェクト「共創公民館」の一環として開催されたイベント「FRAME ROOM」

 

―デザイン関係の方と一緒に仕事をすることは多いんですか?

仕事で関わるようになったのはここ何年かぐらいです。花って、撮影とか空間装飾の場面では結構特殊で。花以外のものは、ここに棚、ここに果物……と感覚的に置いていってもそれなりに配置できるんですけど、花だけは、季節感を出すにはどうしたらいいのかとか、こういう花がほしいけど名前を知らないとか、わからないことが多いみたいで。ちゃんと考えているデザイナーさんほど、花屋に依頼してくるケースが多い気がします。

―河北新報の「みやぎ35市町村 地域愛新聞」の広告企画にはどういった流れで参加されたんでしょうか?

これもクライアントさんからの紹介でした。泉区にある美容室さんの店舗装飾をやらせてもらったんですが、そのお店のウェブサイトを制作したPILEさんという会社が地域愛新聞の富谷市を担当していたんです。名前の知られている人たちがたくさん関わっている大きな企画にまぜてもらえて、本当に貴重な体験でしたね。

―そういった装飾まで手がけるお花屋さんってあまりないですよね。

装飾の仕事は朝早くや夜遅く、営業時間外になる場合が多くて大変だからじゃないですかね。うちは国分町という立地もあって夜遅くまで営業していますし、私はもともと店にいるよりは自由に動きたいタイプなので、その辺は全然苦になりません。

―装飾のスキルは特別に勉強されたんですか?

やりながら覚えてきた感じですね。実際に現場を見て、お客さんのご要望を聞いた上で考えるんですが、最初はやっぱり大変でしたね。でも、装飾以外の花屋としてのスキルも、働きながら身につけてきた感じですよ。

―そうなんですね。それって、一般的なことなんですか?

多分そうだと思います。学校に通って資格を取る必要がある仕事ではないので。

―そもそも、どうして花屋さんになろうと思ったんですか?

高校卒業前に、家の近所の花屋でバイトをしたことがきっかけです。花屋で働きたかったというよりは、家から近かったというのが理由でした。店の中で花を切ってお客さんが来たら花を売るだけの仕事って思っていたんですが、いざ入ったら全然違いましたね。自分に課せられたのは、100本、200本単位で花が入っている段ボールをただただ運ぶという仕事でした。

―想像以上の力仕事ですね!

運動部で体を動かすのが好きだったので、苦にはなりませんでした。動機は適当でしたが、実際に入ってみたら楽しかったんですよね。先輩方がつくる花も、純粋にきれいだなとか思いながら見ていましたし。

そのまましばらくそのお店でお世話になっていたんですけど、違う仕事をしてみたいと思って20代前半で1度花屋を辞めたんです。その後アパレルの販売をやっていたんですけど、「花屋楽しかったな」っていうのがずっと頭にあって。前の花屋の社長にそのことを伝えたら「戻ってこい」って言ってくれて、それから花をつくる仕事をさせてもらうようになりました。そこでまた10年ほど働いて、独立したのは6年くらい前ですかね。

―当時の花屋さんでは、どんな仕事が楽しかったですか?

イベントなどの会場装飾ですかね。とても大きなものをつくったりするんですけど、生花なので3日くらいで解体しちゃうんです。一瞬だけど、すごくきれいなものをつくるっていう。そういうところがよくて、花屋やりたいなぁって思ったんですよね。

―独立して6年、意識してやってきたことはありますか?

何をつくるにしても、いい意味でびっくりさせたい、裏切っていきたいと思っています。なので、常に新しいものを探していますね。

―お店の1番のこだわりは何ですか?

ネイティブフラワーなど、他のお店であまり取り扱っていない花を積極的に仕入れて差別化をしています。どうしても大手さんと比べちゃうと、取り扱う花の種類数や量では負けてしまうので。いわゆるふわっとしてカワイイ、「お花らしいお花」とは無縁なものが多いかもしれませんね。悪く言ってしまうと、暗いとか、華やかさがないというような印象になりますが、それも含めての特色だと思っています。最近スモーキーというか、くすんだ色が流行っていることもありますけど。

店内には普段なかなか目にすることのない珍しい花が多く並んでいる

―流行を取り入れつつ、差別化を?

そうですね。色などの流行はインテリアやアパレルの業界にまず来て、花業界はその後なんですが、待っていたら遅いんですよね。流行に乗り遅れないためにも、ネットでリサーチしたり、街中をグルグル歩いたりということは、意識的にやっています。

―アパレル業界で働いた経験は、今の仕事に活きていますか?

とても意味のある経験だったと思っています。アパレルの人たちとは今でもつきあいを続けていて、「花ってかっこいいものなんだから、もっとアピールしないとダメ」とか意見をもらえたり、いい刺激になっています。昔は「花屋は黒子に徹しろ」と教わったんですが、結局つくっているのは人なので、つくり手の存在もアピールしていきたいと今は考えています。「フロリコの鈴木の花だ」って見てわかってもらえるように、自分のデザインを確立していきたいです。

―一日のスケジュールを教えてください。

朝7時くらいに市場に行って、買参権を持っている花屋は競りに参加し、持っていない花屋は仲卸から買うというのが一般的ですが、うちはお昼から夜遅くまでの営業で、競りの時間に市場に行くのが大変なので、仲卸さんに事前に注文をして花を仕入れています。仲卸の担当者さんがたまたま私と好みが似ていて、珍しい花を欲しがっていることもよく理解してくれているので、こちらであまり流通していないものも積極的に買い付けてくれたりして。品種を指定せずに「赤系のオススメ」みたいな注文をしちゃうこともあるくらい信頼しています(笑)。

―すべての花屋さんが競りに参加するわけではないんですね。

100本単位のまとまった量を買える大きな花屋じゃないと競りには参加できません。小さな花屋が同じ量を買っても捌けないですからね。仲卸から買うと単価は上がるんですが、10本単位で買えるので少ない量を買う場合はかえって安いんですよ。仲卸さんはいろんなネットワークを持っていて、いろいろと相談にも乗ってくれますしね。

―仲卸さんと花屋さんはどうやって出会うのでしょうか。

どこかの花屋で働いてから独立するケースがほとんどなので、その花屋が取り引きをしている仲卸さんにお願いすることが多いです。でも、どこから買わなきゃいけないというルールはなくて、今の仲卸さんとは私の方からコンタクトを取ったことがきっかけでお願いするようになりました。開店祝いの仕事で咲いている花が大量にほしいタイミングだったんですけど、市場に行ったら運よくちょうどいい花をたくさん見つけて、全部買わせてもらったんです。長持ちしない咲いてしまった花を大量に買ったので、覚えていてくれたのか、何度か顔を出すうちに仲よくなって、取り引きさせてもらうようになりました。最初に声をかけた方が担当になり、今はなくてはならない存在なので、たまたまとは言え本当にいいタイミングでした。

取材日:平成29年11月2日

聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)

構成:工藤 拓也

 

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鈴木 啓示

1980年生まれ 仙台市在住

幾つかの花屋を経験したのち2011年仙台市国分町にて

「florico」を開店

花束やアレンジメント販売の他、

ショップディスプレイ、イベント装飾等を手掛ける

 

仙台市内のフローリスト集団「花降る街、仙台」の副代表として

花のある生活スタイルを提案すると共にワークショップやイベント企画に携わる

instagtam: https://www.instagram.com/keiji_0129

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