私と「別れ」
世の中には、2つのタイプの人間が存在すると言われる。
常に刺激を求める人。常に安定を求める人。
自分は昔から、圧倒的後者だ。
だから、春夏秋冬のランキングで、春は必ず最下位。
冒険心を持たないまま、28年間を過ごしてきた。
人生の分岐点には、少なからず環境の変化が伴う。
新たな土地で暮らし、新たな生活基盤を整え、新たな人間関係を築く。
進学、就職、独立、自分もその変化をたびたび経験してきたが、
言わずもがな、いつも心の中には、不安ばかりが付きまとう。
そんな性分だからだろうか。
せわしない街中の雑踏。見慣れたいくつもの景色。
あの頃、何とも思わなかった日常が、目の前から消えた途端、
無性に愛おしく、名残惜しく感じるときがある。
そして同時に、ノスタルジーに浸ってばかりいる自分に、
切なく、悲しく、情けなくなるときがある。
春は別れの季節――。
この時期、常套句として、耳が痛くなるほど聞いてきた言葉だ。
ただ、別れがあるなら、当然「出会い」もある。
その出会いがあるから、前を向いて歩くことができる。
そして人生は、とても晴れやかになる。
まもなく、春の足音が訪れようとしている。
過去を懐かしむだけではなく、今を楽しんで、生きていく。
そんな人間になりたいと、心から思っている。
Writer = 郷内和軌
1992年生まれ、岩手県一関市出身。岩手県立一関第一高等学校卒業後、仙台大学体育学部スポーツ情報マスメディア学科に進学。アルバイト等で執筆経験を積み、2015年4月より岩手県盛岡市の制作会社「株式会社ライト・ア・ライト」に入社。地域限定スポーツ誌「Standard」などの制作に携わり、昨年4月よりフリーランスに。趣味はJリーグ観戦。中でもベガルタ仙台の試合は、年に数回の現地観戦を含み、すべての試合を観戦している。
Photographer = 小泉俊幸
1991年宮城県気仙沼市生まれ、仙台市育ち。尚絅学院大学総合人間科学部表現文化学科、日本デザイナー芸術学院仙台校写真映像学科卒業。広告スタジオ勤務を経て、2018年よりフリーランスのカメラマン/アシスタントとして活動している。