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ライターWS講座 第1回レポート

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So-So-LAB.では、2021年の11月から12月にかけて、全3回にわたってライターワークショップ講座を開講いたしました。講師を担当していただいたのは、大阪を拠点に編集者としてご活躍されている多田智美さん(株式会社MUESUM代表)です。なお、本講座は、コロナ禍の状況を鑑みオンラインで実施しました。

今回は、11月16日(火)に行った第1回目の講座をレポートします。

初回は、多田さんが編集者として携わった具体的なプロジェクトについて教えていただきながら、一見すると定義し難い編集という仕事が、社会の中でどういった役割を担っているのかを考える時間となりました。

はじめに、大阪出身の多田さんにいつか食べてみてほしい“仙台グルメ”を参加者の皆さんに挙げてもらうところから講座はスタート。せり鍋、牛タン、瓢箪揚げ、みちのく煎餅、品はないけどお勧めしたい北京餃子などなど、たくさんの回答が集まりました。一方的なレクチャーになってしまいがちなオンライン講座ですが、多田さんにご考案いただいたこの準備体操のおかげで、チャット機能を駆使して、双方間のコミュニケーションが気軽に行えるように。その後も、多田さんのお話の中で気になったこと、思い浮かべたことなどをその都度参加者の皆さんがチャットに書き込みながら、賑やかにレクチャーは進みました。

(講師の多田智美さん)

多田さんが代表を務められている株式会社MUESUMは、「アートやデザイン、建築、福祉、地域など、さまざまな分野のプロジェクトが生まれるところから参画・伴走し、書籍やタブロイド、WEB、展覧会やイベントなどの企画を通して、まだ可視化/言語化されていない価値や魅力を伝える編集事務所」で、メンバー五人が全員編集者です。さまざまな地域の魅力や活動を伝えるフリーペーパーや、美術館や施設の定期刊行物、ものづくりの思想や背景を伝える書籍、アートプロジェクトの記録集などを担当されてきました。

株式会社MUSEUMのホームページには、「編集とは、夜空の星を結んで星座を名付ける行為」という記述があります。「星は、目が慣れてくるまでなかなか見えず、周りが明るすぎるとその存在を認知できないもの。何事もじっくりと観察し、目に見えていない部分に気がつくことが重要」と多田さんは言います。プロジェクトの根っこには、クライアントのまだ言語化されていない思いや、個人的あるいは社会的背景、地理的な条件や環境など、可視化されていない価値が眠っていて、この部分をより深くつなげるのが編集の役割だということです。

多田さんがリサーチを開始するときによく使われている手法で、キーワードとなる言葉や地名の漢字を分解してみる、ということがあるそうです。例えば、編集という漢字で考えてみると、「編」はバラバラのものを順序立てて組み立てること、「集」は集める、集うという意味があります。この定義に従うと、たくさんあるものの中から、ある方針のもと、選んで並べるのが編集であり、実は私たちが日常的に行なっている料理をすることや、プレイリストを作成すること、洋服などのコーディネートを組んだりすることも、編集の一つということができます。さらに、「集」という漢字の異体字に「輯」というものがあり、この文字には、ほぐす、和らげるという意味があるそうです。多田さんは、『固定観念や思い込みなどの複雑に入り込んでいる物事をほぐす工程を大事にして、セーターをほぐしながら毛糸に戻し、もう一度編み直すように、編集という技術には、「あむ」「ほぐす」両方が大切だ』というお話をしてくださいました。

編集という技術をなんとなく思い描けるようになったところで、多田さんがこれまでに携った具体的なプロジェクトのお話に。

奈良ならではの魅力を伝えるバイリンガルのフリーペーパーである『Good Morning Nara』や、

2017年春に日本遺産に認定された「日本六古窯」の魅力を掘り下げるべく2018年より始動したプロジェクト『旅する、千年、六古窯』、また、2017年3月に福岡県田川郡にオープンした『福智町図書館・歴史資料館 ふくちのち』発足プロジェクトなど、多岐にわたる事例をもとに、編集者である多田さんがそれぞれのプロジェクトにどう並走してきたのかということや、細やかなリサーチの方法、プロジェクトを通して達成したかった目的などについてたっぷりお話いただきました。

今回の講座には、編集を専門とされていない参加者もたくさんいらっしゃいましたが、日常の思考にも大いに役立つ技術を共有いただいた時間となりました。

続く第2回目のレポートもお楽しみに!

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