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クリエイターインタビュー前編|横塚明日美(グラフィックデザイナー/合同会社nekiwa)

「相手と一緒に考えながら、一つのものを作っていく。その過程を大事にしていきたいです」

2020年4月に合同会社nekiwaを設立し、丸森町を拠点にグラフィックデザイナーとして活躍する横塚明日美さん。デザインの世界に興味を持ってから現在に至るまでの経緯と、この仕事のやりがい、そして働くうえでいちばん大事にしていることを伺いました。

― グラフィックデザイナーを目指したきっかけを教えてください。

中学生のときからファッション誌を見るのが好きで、雑誌の中のキラキラした世界に憧れていました。それから高校生になって、当時は仙台で学生のファッションショーが盛んに行われていたのですが、自分も学外のサークルに入って服飾系の専門学生たちと一緒に服を作るような活動をしていました。でも私としては、自分で服を作るのはちょっと違うかなと。それよりも、関連するチラシを作ったり、冊子を作ったりするほうに楽しさを感じていたんです。それでよくよく調べていくうちに、グラフィックデザイナーという仕事を知って、いつかは自分もファッション誌の編集などに携わってみたいな、と思ったのが始まりです。

― それから現在に至るまでの経緯を教えてください。

高校卒業後は、東北工業大学のクリエイティブデザイン学科(現・産業デザイン学科)に進みました。そこでデザインの勉強をして、大学卒業後に仙台の広告制作会社へ就職しました。その会社では主にJR関連の仕事を担当していて、電車の中吊り広告や、駅のホームにある広告を作っていたのですが、代理店の下請けのような形で働いていたので、営業の人から出される指示について「本当にクライアントさんが思っていることなのだろうか」という疑問が常にありました。それでお客さんともう少し近い距離で仕事がしたいと思い、会社を辞めて地元の丸森町に戻り、フリーランスとして働き始めたのが2018年になります。ただ、その翌年に丸森が台風の被害に遭いました。私自身は無事だったのですが、地域が大変なときに自分だけ仕事をしている場合じゃないと思い、ボランティアセンターの事務のお手伝いをすることにしたんです。そこで今一緒に仕事をしている阿賀昌希さんと知り合って、「一緒に会社つくりませんか」という話になり、2020年4月に合同会社nekiwaを立ち上げ、現在に至ります。

― ちなみに最近ではどのような案件をご担当されているのでしょうか?

最近だと、丸森町の復興のPRポスターを作っています。ライターさんが被災者の方々にインタビューをして、そこでお話しされた内容をポスターにするという内容なのですが、災害を風化させないこと、街を元気にすることを目的として、昨年から5年間にわたって制作を手掛ける予定になっています。あとは、地元の中学校や高校に出向いて、デザインの講義なども行っています。その中には統合のため閉校してしまう学校もあるのですが、そこでは生徒たちと一緒になって閉校記念誌を作るプロジェクトも進めています。

学校での講義活動の様子

― 子どもたちと交流しながらの制作は、また違った楽しさがあるのではないでしょうか?

そうですね。特に中学校で講義を行うときは、デザインとはそもそもどういうものかを説明するところから始まります。なので、子どもたちにデザインのことを教えていると、自分が今までどんな仕事をしてきたのか立ち返ることができるので、とても有意義な時間を過ごすことができています。それと、いちばん印象に残っている出来事として、ある学校で講義をした後、子どもたちからもらった感想シートの中に「『好きなことを仕事にしてもいい』と聞いて安心しました」と書かれていたときがありました。中高生の頃は、好きなことだけをやっていてもお金にならないとか、勉強して立派な大学を卒業したほうがいいとか、そういった現実的な話に影響を受けやすいと思うんです。なので、自分がこうして好きなものを仕事にしていることを話していいのかどうか、最初は不安でした。でも、私の話にちゃんと耳を傾けてくれて、そういった感想を書いてくれる子どもが何人かいたので、私の思いが少しは伝わったのかなと思い、とてもうれしかったです。

― デザインの仕事の面白さ・やりがいはどこに感じていますか?

最初の頃は、自分が思っていた通りのものが出来上がったときに喜びを感じていたのですが、最近では、お客さんと一緒にどういう方向に進めていくかを相談しながら、そこで話し合ったことを最終的に私が形に落とし込んでいく、といった一連の流れが、とても楽しいなと感じるようになりました。

― 「一緒に作る」という部分が、いちばんのやりがいにあるんですね。

そうですね。仙台の会社に勤めていたときは、基本的に営業の人がクライアントさんと打ち合わせをした後に原稿などを支給してくれて、それをデザインに起こしていくといった作業をしていました。でも、それだとデザインが完成した時点で、仕事が終わっちゃうような感覚がしたんですよね。それよりも私としては、デザインが出来上がった後のことを考えたかったんです。例えばあるチラシを撒いたとして、その後の反応を知ることで、こんな反応があったから次はこうしようといった改善策を挙げることができるし、そもそも打ち合わせの段階でチラシよりもSNSで展開するほうが効果的なんじゃないかといった話だってできる。そうやってお客さんと一緒に考えながら一つのものを作っていく、その過程を大事にしたかったんです。そういう仕事がしたくて、会社を辞めて独立したという経緯がありますので。

― とは言え、一緒に仕事を進めるというのは、大変なことも多いのではないでしょうか?

大変なことが多いです。特に、相手と一緒に物事を考える中で「もっとこういうのがあったらいいよね」となったときに、まだまだ自分が持っているアイディアが不足しているなと感じています。なので、仕事をよりスムーズに進めるうえでも、対応できる幅をもう少し広げておきたいというのが、今後の目標の一つにあります。そのためには、スキルを向上させたり、知識を増やしたりするのはもちろんですが、一緒に仕事をする仲間を増やすことも必要なのかなと最近では思っています。フリーランスの時代から合わせてまだ3年半ぐらいしか経ってないので、知り合いもそこまで多いとは言えませんが、相手の幅広い要求に応えられるようにチームとして対応できるような仕組みを作っていきたいですね。

取材日:令和3年8月27日

取材・構成:郷内 和軌
撮影:はま田 あつ美
取材協力:不動尊公園キャンプ場

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横塚明日美(よこつか・あすみ)

1992年生まれ、丸森町出身。東北工業大学クリエイティブデザイン学科(現・産業デザイン学科)を経て、2015年、仙台市内の広告制作会社に入社。18年より丸森町を拠点にフリーランスとして活動を始め、20年4月に合同会社nekiwaを設立。紙媒体の広告物を中心にさまざまなジャンルのデザインを手掛けるほか、「手しごとのある暮らしmaru」では地域で受け継がれてきた手しごと商品の販売を行っている。

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