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クリエイターインタビュー前編|泉友子(イラストレーター)

イラストレーターとして第一線で活動をするかたわら、合同会社メリーメリークリスマスランドの代表としてショップ運営やイベント企画・開催も行う泉友子さん。ショップではクリエイターたちが作る個性的なおみやげ品を取り扱い、旅雑誌にも紹介され注目を集めています。ご自身だけでなく、クリエイターのために活躍の場作りを続けてこられた思いとは。コロナを乗り越え、創作への思いを新たにされた今の心境も聞きました。

手軽にアート作品を購入できるイベントがしたい

― 泉さんは青葉区で雑貨店「dia」とレンタルスペース「メリラボ」、2022年8月には蔵王町と松島町におみやげ自動販売機を設置されました。活動の原点について教えてください。

もともとは情報誌の編集部で働いていましたが、1986年にイラストレーターとして独立しました。でもその当時、「(有名な)〇〇さんの絵を真似して描いて」というようなオーダーは当たり前。自分の個性を否定されるようですごく嫌でした。

生意気にも(笑)、断っていたら仕事がなくなって、描いては公募展に次々に応募する生活の中で、オリジナルティが出来上がっていきました。小さな賞をもらううちに、マネじゃない私のタッチでの仕事が入るようになり、パンフレット、ポスター、雑誌……仙台にいながら、東京の仕事もさせていただいて、個展もグループ展も山ほど参加し、たくさん描きました。当時、自分はイラストレーターとしてのスタートが遅いと思い込んでいたので、負けたくなくて、90年代は走っていました(笑)

― イラストレーターとして活躍しながら、1995年からは他のクリエイターが出品できる「メリーメリークリスマスランド」というイベントをスタートされました。

当時、アート系のフリーマーケットはまだありません。時代はバブルが終わった頃ですが、アートスペースで開催するグループ展で、さらりと描いたTシャツが1万円とか2万円、小さな石に絵を描いて1つ5000円みたいな時代で、当時若手の私の作品もそんな値段で取引されました。

うれしいけれど、何か違う。生活の中にアートが入り込み、雑貨を買うのと同じ感覚でアート作品が買えたら。誰にでも手の届く価格でアート作品を販売できないのかな、すれば面白いなとずっと思っていたんです。それで、クリエイターたち手作りのオリジナルのクリスマス雑貨を展示販売するイベントを開こうと思い立ちました。クリスマスが大好きでしたので、そのイベント名が今の社名になっています。 

1996年・vol.2の開催の様子 会場:ギャラリー 週刊アート

― 反響はいかがでしたか。

お客さんにもクリエイターにも楽しんでもらい、「クリスマスのギフトがアート作品」というコンセプトだったのでマスコミにもよく取り上げていただきました。10人の作家で始めましたが、10年続けるうちに全国から200人位参加、会場も大きくなり2箇所同時開催など、パワーアップしていきました。

皆さんの作品、かわいかったんですよ。1dayカフェやライブも会場で行ったり、クリスマスの日に届くカードを発送したり、企画も当時としては斬新でした。Webマガジンの発行やネット通販もイベント初期から行っていたので、チャレンジャーでした(笑)。その当時を知っているお客様には、今でも「メリメリ」と呼ばれています。

2001年からのイベント告知DMなど。公式カレンダーや作品bookも制作。
(メインイラストは、さとうあさみさん・ほんだあいさん)

― その後、実店舗を構えられました。

イベントを店にするつもりは全然なかったんです。イベントを10年で終了すると告知していたからか、店舗化の誘いを受けて、最初はサンモール一番町のカラオケボックスの一部屋をDIYで改造して店としてスタート。その後、路面店を探し、翌年の2006年に「メリーズセレクション」という名前で、メディアテークの裏に赤いドアのショップを出しました。ここも外壁から床、棚まで、すべて手作りです。2011年の震災で別棟が半壊になり、秋に晩翠通りの今の店舗に移転し「dia(ディア)」と店名を変更しましたが、赤いドアは色を塗り替えて持ち込んでいます。当時、取扱いクリエイターは最大で全国に150人以上いました。

左:メリーズセレクション   右:現在の店舗「dia」(R4.12.27に閉店)

クリエイターがおみやげを作ったら面白いはず!

― 現在のように、おみやげ雑貨を多く扱うようになったきっかけは。

2009年に仙台駅前の商業施設から「地元のクリエイターたちと何かできないか」とお声がけがありました。何がいいかな…と考えて思いついたのが「おみやげ」だったんです。

今はずいぶん増えましたが、震災前の仙台・宮城にはクリエイターがおみやげ雑貨を作るという発想はほとんどありませんでした。でも必ず面白いものができると確信していました。七夕とかずんだ、伊達政宗……モチーフはたくさんあるから。それで「クリエイターが創る、新しい仙台みやげ展」と銘打ち、8年間開催しました。

1回目の会場・作品など。完成度が高くて、面白い作品が集まった。
仙台以外の地域の方から「私たちの街にもあったらいいな」という声も。
ご当地キャラクター「むすび丸」のベースをクリエイターにダンボールで制作してもらって、参加者でペイント。

― 開催してみて手応えはいかがでしたか。

大変盛況でしたし、作品は想像以上に力作揃い。例えばこけし一つとっても、それまで見たこともないユニークなものが出てくる。「クリエイターの発想ってこんなに面白いんだ!」と一般のお客さんたちに知っていただける機会になったし、実際に購入してもらえ、作家のモチベーションにもつながりました。この企画を開催したことで、仙台・宮城の魅力が新たな視点で掘り起こされたと思います。

毎年、参加者にパーツを作ってもらって、会場で組んで作った七夕飾り。
本当に力作です!

― どのような作家さんに声をかけたのですか。

店で取り扱っている作家はもちろん、広告の仕事で一緒になったデザイナーやカメラマン。クラフト作家など、伝統系も含めたモノをつくられる方、力があるのに“世の中から発見されていない”クリエイターも。クスッと笑えるもの、ちょっとクセのあるものなど、センスの良い方にお願いしました。

「おいしい1週間」というタイトルで、お菓子作家さんの作品を集めた人気企画を店で行っていたので、その作家さんたちにも宮城や仙台をイメージしたお菓子を作って参加してもらいました。それが大当たり!行列ができるほどで、翌年からも自由な感性でお菓子を作る人の参加がどんどん増えてきたのも印象的でした。

クリエイターとお客様を直接つなぐ場づくり

― 店舗には多目的レンタルスペース「メリラボ」を併設されています。ここを開設された思いは。

メリラボをオープンしたのは2010年でした。赤いドアの店舗の隣の倉庫が空いたことがきっかけで、またペンキ塗りから始めて作り上げた、6畳ほどの真っ白な空間です。ポイントは「1階にあって搬入がラク」、「作品が引き立つシンプルな空間」。これまで自分がいろんなギャラリーを使ってきた経験を活かしました。そして、アートな実験室にしたくて、メリラボと名付けました。

販売手数料のない、自由に販売できる箱に特化した料金設定は、展示だけでなく、雑貨や服、お菓子の販売など、店舗を持たない方にも多く借りていただいて、今で言うポップアップショップの“はしり”になりました。この自由に使えるスペースは、震災後に移転し、可動式パーテーションにより3つの空間に分けて使える20畳ほどの大きさになりました。

左:オープン当初のメリラボ
右:現在のメリラボ(R4.12.25に閉店)。ドアはオープン時のものを引き継いでいる。

― どのように利用されていますか。

ライブやお話し会、写真展、絵画展、マルシェ、ワークショップ、様々な販売会に使っていただき、使う人によって変わる空間表情に、毎回びっくり!感動をいただいています。占いやカラー診断に使う人もいて、大きな窓があって外から中が見えるので、通りがかりに入ってきてくれる人も多くいます。お客様には、中が見えるので安心して入れると好評です。

取材日:令和4年10月11日

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泉友子

イラストレーター

合同会社メリーメリークリスマスランド代表。
1986年からフリーのイラストレーターとして活動開始。
個展・グループ展に多数参加。「旅こよみこけし(2015)」「マッチ箱マガジン(2013)」でグッドデザイン賞受賞。

メリーメリークリスマスランド(Webサイト)
https://merimeri.biz/

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