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クリエイターインタビュー|川上 謙さん(中編)

東北芸術工科大学の出身で、現在は仙台在住の建築家である川上謙(かわかみ けん)さん。リノベーション専門の設計事務所LIFE RECORD ARCHITECTSの代表として、仙台を拠点に活動されている川上さんにお話を伺いました。

 

―仙台のまちについてはどう思いますか。

いろんな捉え方がありますけど、気候的な暮らしやすさもありますし、都市の規模も大きすぎず小さすぎず、東北の中心であるというのは仙台の魅力でもあると思います。東京まで2時間かからずに行けてしまう時間も魅力ですよね。ただその分、再開発をはじめ東京のような大都市を目指す動きもありますけど、僕は仙台ならではのローカルを目指すべきではないかと思って活動しているところはありますね。再開発が良くないとは思わないですし、ある部分ではとても重要で、若い人たちにとっても新鮮で楽しい場所になっていると思います。だけどそれだけだと東京とあまり変わりがない。そうではなくて、仙台らしさがあるような場所がもっとマチナカに点在していくと、さらに面白い街になると思い活動しています。

―仙台で働く中で、何か気づいたことはありますか。

このような仕事をしていると、建築に限らずシェフやデザイナー、アーティストなど様々な職種の方とつながっていくことが多いです。そして話してみると共通の友人がいたりして。良い意味で、仙台って意外と小さいコミュニティだなって、やってみてわかりました。

大切なのは地元の人や企業が互いに協力して活動していくと、地元らしさっていうのが広がっていくと思います。

―その地元らしさをもっと出すということが、仙台に期待するところですか?

そうですね。「地元らしさ」ってとても大切だと思います。今色んな方と「仙台を面白くしよう!」と思って活動している事が多いですが、そもそも仙台の魅力ってなんだろう?というところから話し合うことがあります。実は自分たち自身がまだ仙台の魅力に気付けていない事も多く、その際は外部の方からの意見も良く聞きます。「よそ者」の方が実はその場の魅力に気付きやすかったりするんですよね。

僕も関わっているのですが、仙台カルチャーのウェブサイトSEN.ができたり、リノベーションまちづくりでSDC inc.(事務局注:株式会社GUILDやSENDAI COFFEE STAND代表の本郷紘一さんが代表)が誕生したり。それぞれに活動している人たちが集結して小さなコミュニティが出来つつあります。僕自身お花屋さんやシェフ、不動産の方と一緒に「街の庭師」という会社の立ち上げに向けて動いていて、お庭というテーマで仙台の街並を美しくする事を目標にしています。それぞれにテーマはありますが、結局思いはひとつで「仙台の街を豊かにする」ことだと思います。それぞれの小さなコミュニティを互いに線にして繋げていけると、もっと広がっていき「地元らしさ」が表れる街になっていくのではないでしょうか。

地元らしさを出すためには、小さなコミュニティ同士がタッグを組む必要があると語る川上さん

―今後、仙台でチャレンジしていきたいことはありますか。

大学で出会った人も、そこから広がってつながった人もそうですけど、面白い人たちって仙台に限らず全国各地にいるんですね。その人たちは、東北出身なのに東京の方に流出していっているのも実際あって。そういう人たちから、「いずれは東北に戻ってきたいけど、働く環境や、つながりが自分にないから難しい」っていう話をよく聞きます。なので、その人たちが東北に戻ってきて楽しく仕事ができるように、自分はその地盤を整えていきたいと思っています。自分が素敵だなぁと思う人と一緒に、仙台や東北で仕事ができたら、ものすごく楽しいと思うんです。楽しく仕事ができれば、人生が楽しくなると思うので、そこを目指してやっていきたいです。

―仙台でそういう環境づくりに取り組む方がいるのは、すごく嬉しいことです。今は仙台で活動されていますが、出身の相模原や宇都宮にも関わってみたいという思いはありますか。

今のところはないですね。相模原とか宇都宮は、もう既に活動されている方がたくさんいらっしゃいますし、そこにわざわざ僕が介入していくこともないのかなって。あとは親戚や友達が仙台に多くいるっていうのが一番の理由です。リノベーションまちづくりの活動も、まちのためであり自分自身のためにでもあります。まちを楽しくすれば自分も楽しくなって、自分が楽しければまちも楽しくなって、という関係性を築けていけるのがまちづくりだと思っています。だから、仙台をもっと豊かにするためにはっていうことを考えながら活動することで、僕とまちの良い関係性につながっていくのかなって思っていますし、まずはそこに集中したいです。ただ、仙台とつながりのある塩竈や松島などの郊外はもちろん、お隣の山形など、「お隣さん」ってとても大事だと思うのでそういう場所には積極的に関わっていきたいと考えています。

―自分が楽しめないような場所は、他の人も楽しめないという感じですか?

誰の言葉か忘れましたが、「自分の家の庭だけじゃなくて、それぞれが家の前の道も少しだけ綺麗にしていくと、暮らしている環境が自然と綺麗になり豊かになる」という事を聞いて、確かにそうだなと思って。自分が出来る事って自分の仕事プラスちょっとαだと思うんです。全てをやろうとするのではなく、良いと思った事を少しずつ広げていく。このような活動をしていく中で、そういう人たちが増えていくときっと豊かなまちが出来るのではないでしょうか。

取材日:平成29年7月20日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)
構成:岡沼 美樹恵

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川上 謙

1986年神奈川県生まれ。栃木県宇都宮市育ち。

東北芸術工科大学院修了。

仙台市の設計工務店に勤め、住宅や店舗などの設計施工に携わる。

2015年 LIFE RECORD ARCHITECTS設立

仙台を拠点に宮城、山形を中心に活動。

独立後はリノベーションを中心とした活動を行う。

仙台リノベーションまちづくり実行委員着任後、他業種のメンバーからなる「街の庭師」を設立。仙台をもっと楽しく、豊かな暮らしへの実現に向けての挑戦を行っている。

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