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クリエイターインタビュー|太田 サヤカさん(後編)

フリーランスデザイナーとして活躍する太田サヤカさん。「Little Partner」を屋号として、常にクライアントの伴走者であろうとする太田さんに、お仕事のこと、仙台で働くことについて伺いました。

 

―ところで、フリーランスになってすぐに生活していけるくらい、お仕事はあったんですか。

 そうですね。analogをやりながらだったんですけれども、そのanalogの収入プラス、ありがたいことに以前から私を知っている人だったりとか、SNSで私の作品を見たっていう方から途切れなく仕事をいただけていたので、何とか生活できてきたという感じでした。

2018年はそういう感じでずっとやっていたんですけれども、さらにまたハードルを上げて、その安定した収入というかanalogでのアルバイトの収入をなくしたときに、もっと自分は営業活動とかもっと必死にやったほうがいいんじゃないかと思って。それで、analogでまだ勉強したいこともいろいろあったんですけれども、ちょっと1年経った節目ということで、1人で営業活動をして本当にやっていけるのかどうか試したいということで、12月いっぱいでanalogをやめて、今に至ります。

―具体的にどういう営業をされているんですか。

 SNSで自分の作品をちゃんと発信するっていうことだったりとか、あとは人と会って、「初めまして」って言ったときに、自分の作品を見せることだったりとか。やっぱり「デザイナーです」って言って名刺だけ渡されても、どういうデザインをつくるのかって一番気になるところだと思うので、見せたりとかを積極的にやる感じです。

―フリーランスを名乗ったときから、Little Partnerは名乗っているのですか。

そうです。すごい考えたんですけれども。

印刷会社が手がける「tegami project」にイラストレーターとして参加したときの作品。

―いいですね。お客様の小さなパートナーになる、みたいな。

 そうです。イトナブにいたときに、私はキャラクターデザインが得意なので、社長に「キャラクターをいっぱいつくって、それを何円とかでネットで販売するっていうことをやってみたら」って言われて、そのときにそのサイトの名前を考えて、Little Partnerにしていたんですよ。でも、何の思いもなくつくったものがどこの誰かわからない人たちに配られていくっていうのが嫌だなって思っちゃって。結局やめていたんです。

それで、自分の開業の屋号を考えたときに、そのことを思い出して。デザインってつくって終わりじゃなくて、キャラクターみたいにずっと自分の肩に乗せているみたいな、寄り添って一緒に生きていく、生活に寄り添っていくデザインというのをしたいなって思ったので、そういう人に寄り添う、人の気持ちを考える、人の生活とそのデザインが同化していったりとかするようなデザインをしたいなと思って、この名前にしたんです。

―今はどんなお仕事をされているんですか。

 ロゴデザインですね。これは石巻の建設会社さんのロゴで。

ものを組み立てていく仕事なので、組み立てるっていうことで縁起のいい形を使ったりとかしたんですけれども、その会社さんのロゴリニューアルから、いろんな封筒とか、名刺とかのリブランディングというものをやったりとか。

あと、宮城の石巻のカキとかホヤとかホタテを海外に輸出している会社さんがあって、そこのカキを、もっと殻つきのカキを海外に積極的に輸出しようみたいなプロジェクトがあって、そのプロジェクトのチラシとか。

建設会社のロゴやノベルティを制作

―全然テイストが違うものを作るんですね。

 何案か出して、好きなものを選んでもらってという感じなんですけれども。

あと、ウェブサイトデザインですね。気仙沼のソコアゲっていう事業団とか、最近は東北大学の保育園もやらせてもらったりとか。

フリーランスになってからいろんな働き方を学んでいて、知り合い伝手でフリーランスでやっている方から個人的にメッセージが来て仕事をするということもありましたし、デザイン会社の方が会社からSNSで私のホームページを見てくださって、全然何のかかわりもないのに連絡をくださって仕事をしたりとか、クライアントさんと直接やりとりをしたりとか。今は、システム系の会社さんに結構お世話になっていて、アプリのデザインをしているんですけれども、ホテルの客室にあるタブレットのデザインとかをやっているんです。フリーランスだからこそ、こういういろんなかかわり方ができるのかなっていうところで、すごい勉強になっているところです。

―今後目指すところを教えてください。

 目指すところは、とにかく自分のデザイナーとしての経験と技術を上げていって、将来的には学生さんに現場で使える技術みたいなことを教えたりとか、そういうレベルまでいきたいなって思っています。イトナブにいたときに、学生に教えたりしていたんですけれども、なんかもっと上手に教えてあげたいし、今の自分のレベルで「教える」なんていうことできないなって思いながらやっていたんですよ。

でも、やっぱり若い子たちが自分のやりたいことを見つけて羽ばたいていく姿っていうのを結構見ていて。全然やりたいことが見つからないって言っていた子が、ライゾマティクスっていうPerfumeの演出とかをやられている会社さんとコラボをして、石ノ森萬画館にプロジェクションマッピングをしたことがあったんですね。彼は、それがきっかけで映像に興味を持って、今芸工大の映像学科に入って。そういう子たちに教えたりとかできるようになるレベルまでいきたいなっていうふうに思っています。

―Little Partnerの“売り”は何ですか。

 人とのつながり、人に寄り添うことを大切にしているので、直接会いに行ってお話ししたりとかすることを心がけています。そんなに頻繁に打ち合わせとかすると迷惑だったりもするんですけれども、なるべく顔を合わせてお話を聞いたり、デザインのことをあまりよく知らない方にもわかりやすいように話したりとかすることを大事にしています。当たり前のことなんですけれども。

自らのハードルを上げていくことで高みを目指す太田さん

―太田さんが仙台で働く理由を教えてください。

 私、仙台がすごく大好きで。秋田の田舎で育ったので、都会への憧れっていうのもあるけど、東京とか人が多いところはちょっと肌に合わなくて。仙台って結構ちょうどいいな、と。すごい一般的な意見なんですけれども。

新しいカフェとかお店もどんどんでき上がるし、やっぱりデザインしていると刺激が必要になってくるんですよ。なので、イベントに行ったりとか、お店に行って今流行っているものを見たりとかすることって結構大事で、行き詰まったら結構まちに繰り出してお店を見たりできる環境もいいなと思っているので、仙台は好きです。永住したいなって思っています。

―仙台にこういうまちになってほしいとか、こういうまちにしてみたいとかありますか。

 若い人にデザインを教えたいです。それは、自分が学生だったときに先生以外の人とかかわることってなかったんですよ。学校を卒業してすぐゲーム会社に入ったけれど、学校で勉強していたことが全然発揮できなかったというか、役に立たなかったというところがあって。実際に仕事でデザインをするときにどういうツールの使い方をすればいいのか、1人じゃなくてチームで仕事をするので、チームで仕事をする上でどういうデータのつくり方とか資料のつくり方をするのか、どういう伝え方をするのかっていうところがやっぱり戦力になるし、すごい大切なことだと思うんです。今はそういう系の学校の教育ってどうなっているのかわからないんですけれども、私のときは自分の想像力とかを生かして、自分のつくりたいもの、自分の表現をするっていうことを結構集中してやっていたんですけれども、社会に出たときにそれって結構通用しない。むしろデザイナーはそれを少し、自分を少し殺してやらなきゃいけないというところもあって、それは社会に出てから気づいたんです。だから、もうちょっと学生のうちから知っておきたかったな、と。

学生とか若い人に向けて、実際の現場ってこうなんだよっていうのを教える機会っていうのがあればいいな、プログラムがあればいいなって思っています。

―行政に求めることはありますか。

 今言ったプログラムを支援してもらえたりしたら嬉しいなって思います。

―では最後に、これからデザインやってみたいと思っている人にメッセージをお願いします。

 いろんなものをよく見ることですね。美術館とか、図書館に行ってデザインの本を読むっていうことも大切なんですけれども、意外と狙っていないときにアイデアが浮かんだりとか、これってデザインに置きかえたらこうなんじゃないみたいなことって、日常の中にたくさんあるんですよ。それはどこかに旅行に行くでもいいですし、スポーツをするでもいいですし、とにかくいろんな体験をしたほうがいいなって思います。

あとは、どんなときも人に思いやりの心を持つこと。お客さんに対してもだし、一緒に働く人に思いやりの心を持ってやること。

そして、どんなときも自分のデザインで人を笑わせたいとか、人を喜ばせたい、笑顔になってほしいっていう思いを忘れずに、粘り強くやることが大切だって思います。自分のつくったもので人を笑わせたい、喜んでもらいたい、プレゼントの渡し方一つも普通にじゃなくて、もっとサプライズでやってあげたいみたいな、そういうサービス精神、人を思いやる心がある人がデザイナーに向いていると思うので、そういう気持ちがある人は粘り強く頑張っていただきたいです。

取材日:平成31年3月6日
聞き手:仙台市地域産業支援課、岡沼 美樹恵
構成:岡沼 美樹恵

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太田サヤカ

人に寄り添う、小さな相棒みたいなものを
デザインしていきたいという想いで活動しています。
ロゴ・キャラクター・イラスト・WebApp・印刷物など手がけています。
肩に乗っているのは、シマリスです。

 [経歴]

2013年 KLab株式会社 グラフィックデザイナー
2014年 株式会社イトナブ グラフィックデザイナー
2017年 DIY印刷加工所analog スタッフ
2018年 独立「Little Partner」グラフィックデザイナー

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