THINK! MAKE! SHARE! -8- マーケティング戦略ってなんだろう
朝日クラフトの廃材「ターポリン」を再利用し、新たな商品開発を行うプロジェクト。FabLab SENDAI - FLATのデジタル工作機を活用した試作から商品開発までの工程を紹介していきます。
小野寺 これまではプロダクトのデザインについて検討を行ってきましたが、今は造形ばかり気にしているため、このままでは“商品化”というゴールへたどり着けないのではないかという焦りが徐々にでてきました。
ということで、ここで一度作業をストップして専門家の元へお邪魔し、販売を前提とした商品開発の基本についてお話を伺うことに。
大網 今回お話をお聞きしたのは、(公財)仙台市産業振興事業団 ハンズオンコーディネーターの笠間建さん。新規創業やマーケティング戦略策定の支援等を行っていらっしゃる方です。
小野寺 はじめに、こちらからプロジェクトの現状と製作物について一通り説明をさせていただきました。そうしたところ、まず質問されたのが今回のプロジェクトで製作するアイテムターゲットについて。通常、マーケティングではあるターゲットを設定し、それを元に商品やサービスについて検討が行われます。今回は、朝日クラフトさんから出るターポリンのリサイクルが商品開発の条件だったため、ターゲットの設定についてはほとんど考えていませんでした。
大網 ですが、ただプロダクトの質を上げていっても、実際にユーザーの手に渡ったときに意味を為さない可能性がありますし、そもそも本当にユーザーの手に渡るとは限りません。そのため、はじめにターゲットを設定してリサーチとテストを行いながらプロトタイピングをするべきとのこと。
小野寺 マーケティングについては右も左も分からない状態なので、笠間さんのお力をお借りしながら、ひとつひとつ情報を整理していくことにしました。はじめに、マーケティングを行う上で検討し、実施しなければいけないのがこの3つ 。
小野寺 どんなプロダクトを作るのかというラインナップ体系を考え、それぞれどんな人(ターゲット)に使ってもらいたいか、また使ってもらえる可能性があるのかという仮説を立てます。そして、ターゲットとなる人々は日々どのように暮らし、行動をしているのかという実状調査と、プロダクトを実際に使用してどのように感じたかというフィードバックを得ることが必要だそう。大まかではありますが、この流れに沿ってまとめていきます。
大網 まずは、ラインナップ体系をまとめるところから。この表に、これまでに作ってきたプロダクトの情報を書き込んでいきます。
大網 実際に埋めたものがこちらです。FLAT BAGは組み立て式バッグ、FLAT CASEは組み立て式ケース、そしてKNIT-LIKE CASEは編みテキスタイルのケースをそれぞれ表しています。
小野寺 今回は、FabLab SENDAI – FLATが主体となっているプロジェクトのため、プロダクトの管理人は私たち。したがって、コーポレートブランドはFabLab SENDAI – FLATとしました。また、今回のプロジェクトは端材・廃材のリサイクルを目的としたものだということと、今後も他に端材等を利用した商品を開発したいと考えているので、プロダクトブランド欄には『アップサイクルプロジェクト』というブランド名を仮置きしています。ラインについては、これまでプロトタイプを作成したなかで、なんとなく形になってきたものを記載しました。アイテムについても同様です。これに加えて、アイテムについてはそれぞれの強みと弱みも記載してみました。
大網 ここまでは、まだラインナップ体系をまとめただけ。次に、ターゲットを詳しく設定していきます。
小野寺 今回はFLAT BAGにフォーカスし、ターゲットや使用シチュエーションを考えてみることにしました。このバッグの一番のポイントは何かと聞かれて出てきたのが「ものをおおざっぱにまとめていれられる」ことと「水に強い」こと。そこからざっくりと「荷物の多い人」と「水回り、砂・土の多いところで活動する人」というターゲットのキーワードが出てきたので、これらをさらに詰めていきます。
大網 そして出てきた意見をまとめたものがこちらです。大きく分けて2つのターゲット・シチュエーションが浮かび上がりました。
小野寺 どちらも自分の実体験や、普段FabLab SENDAI – FLATを利用しているユーザーさんの様子を思い出しながらシチュエーションを書き出しました。ただこれはまだ仮説でしかありません。次に、実際に自分がターゲットとして挙げた人々が、実際にはどのようなものを使い、行動しているのかを調査する必要があるとのこと。そこで得られた知見を基に、本当に今回製作するバッグのサイズはこれでいいのかなどという形状の検討を再度行っていきます。
大網 またそれと並行して、自分が想定したターゲットにとってこのバッグが使いやすいかどうか、どんなところが問題か改善点はあるかなどを調査するために、ユーザーテストを行う必要も。特定のターゲットに向けて商品を改善していくことに加えて、自分の想定していなかったところにもターゲットとなり得る人がいないかどうか、またニーズがないかということを調査していきます。
小野寺 笠間さんへの質問タイムはここでタイムアップ。今回の打ち合わせを通じて、いかにこれまで自分が商品の形状そのもののことしか考えていなかったかを痛感しました。また、情報を細分化していくことで今までは思いつかなかったような、新しいヒントを得ることもでき、ミクロとマクロ両方の視点を使い分けながらプロジェクトを進めていくことの重要さを感じた1時間でした。
大網 次回は、マーケット等での販売を通じてターゲットとなり得そうな方々にお話を聞いて、どんな反応が得られるかをリサーチするとともに、すっかり抜け落ちていたブランド名やロゴタイプの検討を行なっていきます!
FabLab SENDAI ‒ FLAT
FabLab SENDAI ‒ FLAT は、個人や小規模チームによるものづくりの実験の場であり、実践の場です。レーザーカッターや3D プリンターなどデジタルデータを利用する加工機械を使い、スピーディーかつ低コストなトライ&エラーを通して、自分のアイデアを形にしていくことが可能です。
また、集まった人同士で情報交換や協力をし合ったり、日本や世界に広がるFabLab ネットワークを通じた世界中の人たちとの交流の中からアイデアが立ち上がるような、新しい形の工房です。
FabLab SENDAI ‒ FLAT で機材を利用するためには、機材ごとに初回講習を受講していただく 必要があります。初回講習や見学会などは、下記よりスケジュールをご確認ください。 http://fablabsendai-flat.com/facilities/