私と「汗」
数年前、とある食品にまつわる冊子の制作を任されたことがあった。
しかも小学生向けの冊子。全くもって専門外の分野だ。
果たして自分にできるだろうか。
そんな不安は的中し、慣れない作業に手を焼く毎日。
夜遅くまで働いては、怒られ、謝り、また怒られ……
周りに迷惑ばかりかけてしまった。
なんとか印刷までこぎつけて、ひと段落。
だがある日、スーパーでの買い物途中、その食品が陳列棚に現れた。
すると、頭の中がぐるぐる、体が妙にそわそわし、
首と額が冷たくじんわりと湿り出した。
トラウマとはこういうことなんだ――。そう悟った瞬間だった。
失敗は成功のもと。
そんな言葉が世の中にはあるけれど、
大人になればなるほど、立ち直るのには時間がかかるし、
嫌な出来事は一生、記憶から消え去ることはない。
でも、その失敗を経験に変えられるのが人間だ。
そして、それを次に生かそうと精魂込めて働かなければ、
クリエイター、もとい、社会人として落第点だ。
今日も東奔西走、取材に出向き、家に帰ればパソコンとにらめっこ。
身体のあちこちがべたつくが、なぜだか逆に心地よさを感じる。
あんな思いは、もう二度としたくない。
仕事でかく汗はいつだって、爽やかでありたいものだ。
Writer = 郷内和軌
1992年生まれ、岩手県一関市出身。岩手県立一関第一高等学校卒業後、仙台大学体育学部スポーツ情報マスメディア学科に進学。アルバイト等で執筆経験を積み、2015年4月より岩手県盛岡市の制作会社「株式会社ライト・ア・ライト」に入社。地域限定スポーツ誌「Standard」等の制作に携わり、19年4月よりフリーランスに。趣味はJリーグ観戦。中でもベガルタ仙台の試合は、年に数回の現地観戦を含み、すべての試合を観戦している。
Designer = 大久僚一
1988年生まれ。大学卒業後は医療業界に就職。26歳からデザイン業界に転職し、都内・仙台のWeb制作会社にてデザイン業務を経て2017年にフリーランスに転向。クライアントの課題を解決するために、企画提案から制作・運営まで行っている。また株式会社湯治の代表取締役CTO、東北工業大学の非常勤講師、未経験の方々にデザイン講座を行う。RethinkCreatorとしても講師を勤めている。