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令和3年度 仙台市クリエイティブプロジェクト助成事業 成果報告会レポート

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先日、3月3日(木)に今年度の「仙台市クリエイティブプロジェクト助成事業」の成果を発表する報告会がTRUNKにて開催されました(開催概要:https://sendai-c3.jp/sc3_2021/projects/creative-project-2021-presentation-results/)。
審査委員のお一人で東京在住の若林恵さん(黒鳥社/コンテンツディレクター、編集者)は、Zoomでの参加となりましたが、久しぶりに全員がそろった有観客イベントということもあり、みなさん緊張した面持ちでのスタートとなりました。

最初の発表となる一般社団法人くるむ代表の佐藤さんの発表では、完成した新商品である肌着作成キット「KURUMU KIT」の試作品をご覧いただきつつ、商品に込めた想いやプロトタイプの試作品協力者からの感想などが伝えられました。今回の商品は、基本の肌着に付属パーツを縫い足すことで、「低出生体重児」に限らず、どんなサイズの赤ちゃんにも対応できるキットとなっており、お母さんだけでなく、お父さんでも子どもたちでも作ることができる難易度です。妊娠出産にまつわることは、どうしてもお母さんの負担が大きくなりがちですが、実際に子どもが生まれたばかりのあるお父さんは、「肌着づくりを通して、自分の想いが伝えられるようだった」と話しておられたそうです。来年度以降、更にブラッシュアップを経て商品化を予定していますので、ぜひ今後もくるむ社の活動にご注目ください。
https://kurumu.baby/

2件目の発表である、有限会社奥州秋保温泉 蘭亭の若手職員みなさんは、通年の成果として2月に行ったマイクロツーリズムの実証実験を中心に発表。プロジェクト開始時に、秋保地区の魅力を旅館職員であるご自身たちこそ知らないことが課題であると感じ、周辺地域のリサーチや視察を重ねられました。そこに、まちづくりやクリエイティブの専門家である協働クリエイターたちからのアドバイスを経て、自分たちにしか企画できないツアーの在り方を模索されました。コロナ禍の影響による観光業の疲弊が著しいなかで、持続可能なアイデアを出し続ける地域人材の育成にチャレンジした一年となりましたが、今回の経験を機に、今後も継続して秋保を盛り上げていっていただけたらと思います。
https://www.akiu-rantei.com/

3件目の発表は、プロダクトデザイナーとして昨年5月にUターンされた小松大知さんです。かつて仙台市に存在した、初の国立デザイン研究機関「商工省工芸指導所」の残された産業工芸品をリプロダクトすることを目的にプロジェクトをスタートさせました。今年度は、当時の資料を収蔵する東北歴史博物館や、「商工省工芸指導所」に由来する東北各地の企業や工人の方々の協力のもと、キャニスターとサラダボウルのリプロダクトが完成しました。今後は、リプロダクト商品の販売や意匠データのアーカイヴ化およびウェブサイトでの情報発信などを通して、日本における「商工省工芸指導所」が産業デザインに果たした役割を広く周知すべく、引き続き活動を展開される予定です。
https://www.torch-design.com/
*本サイトのクリエイター・インタビューにも登場いただきましたので、ぜひ合わせてご覧下さい。
https://sendai-c3.jp/sc3_2021/features/interview/daichi-komatsu-1/

4件目の発表には、八木山地区まちづくり研究会の谷口さんが登壇。プロジェクト始動直後の昨年6月から今年2月まで、合計10回のイルミネーションイベントを開催されました。パンデミック下でほとんどの地域イベントが中止される中で唯一、毎回数百名の集客を記録し、すっかり八木山地区の人気イベントとして定着されたようです。
通年の開催を通して、当初課題としていた20代〜40代の地域活動への参加も、アンケート調査から増えたことがわかりました。今回の成功を導いたポイントは「かかわりやすさ」にあると話す谷口さん。来場者のみなさんがLEDライトの設置に自ら参加し、撤収にも協力されるという、誰もがいつでも気軽に地域活動に寄与できる運営手法であったことが功を奏したようです。本プロジェクトは来年度以降も継続開催がすでに決まっておりますので、最新情報はサイトをチェックしていただけたらと思います。
https://machi.yagiyama.jp/

最後の発表者は、未満建築デザインファームのみなさんです。まちづくりの専門家である豊嶋さんと建築家の貝沼さん(参照:クリエイターインタビュー https://sendai-c3.jp/sc3_2021/features/interview/izumi-kainuma-1/)、そして行政で都市整備に関する仕事に従事する大山さんというメンバーによる、中心市街地のオープンスペース(公開空地)の利活用促進にむけたプロジェクトです。今年度は、大手デベロッパーのご協力のもと、12月末に実際に街中の公開空地で実証実験を行いました。そこで見えてきた課題を踏まえ、最終成果として仙台市内の中心市街地にある公開空地のマップ『仙台滞在空地』を作成されたみなさん。仙台フォーラス7Fにある施設「even(https://sendai-c3.jp/sc3_2021/spots/even/)」内に、広報ブースを設置し、来年度以降も活動を継続します。建築やまちづくりに関心のある方は、ぜひ引き続きチェックしてみて下さい。
https://note.com/miman_archi/

発表後の審査委員各位からの総評では、いずれのプロジェクトも一年の成果がうかがえると高評価をいただきました。コロナ禍で以前のように気軽に人の交流や催事ができない状況にもかかわらず、チャレンジし続けたみなさんに、伴走支援者としてもまずは拍手を送りたいと思います。
「クリエイティブ・プロジェクトが仙台の未来を呼び覚ます」という少々大仰なキャッチフレーズを掲げ、プロジェクトの公募を行いましたが、まさにそのフレーズにふさわしいプロジェクトであっと感じます。
50万円という助成金があったからこそ、トライすることができたという側面ももちろんあると思いますが、それ以上に各位の熱意を近くで感じることができました。とはいえ、今後の事業性などそれぞれ次の課題が見えたのも事実ですので、引き続きこの経験をバネに次年度以降も進めていただけましたら幸いです。

なお、クリエイティブプロジェクト助成事業は、平成21(2009)年度にスタートして以来、13年間に渡り仙台のクリエイティブ活動を支援して参りましたが、今年度をもちまして休止となります。
昨年度と今年度のみ、仙台市経済局とともにSo-So-LAB.が運営して参りましたが、全国的にみても稀な、経済と文化芸術の中間に位置する目的を持った助成事業であったと思います。助成事業は休止となりますが、仙台からクリエイティブの火が消えることのないよう、他の助成事業などを活用し、これからも仙台の未来を築く新たなプロジェクトが生まれ続けることを期待しています。

司会進行/プロジェクト伴走支援者
長内綾子(So-So-LAB.コーディネーター)

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