Article 記事

クリエイターインタビュー前編|大久僚一(Webデザイナー)

キーワードは「人」。周りのみなさんには本当に恵まれました。

現在、Webデザイナーとして第一線で活躍する大久僚一さん。順調にキャリアを重ねるも、フリーランス転身後に待っていたのは大きな壁でした。そんな先の見えない中、彼を救ったのが人との「つながり」。たくさんの出会いが、その後の人生に大きな光を与えました。

―この仕事を志したきっかけを教えてください。

生まれは福島県で、すぐに名取市に引っ越しました。大学の頃はバンド活動をしていて、それから就職活動に切り替えて、医療機器販売の会社から内定をもらいました。主に営業として石巻を担当していたのですが、商社だったので、仕入れて物がないと、自分たちは利益を生めなかった。自分の力で利益を生み出せるものはないかなと考えたときに、なんとなく求人サイトを見て、出てきたのが「Webデザイナー」という仕事でした。ただ、正直最初はどんな仕事か分からなくて(笑)。一応、大学ではデザイン学科を卒業していたのですが、ガラケーの時代でしたし、ソフトも使えなかったので、ほぼゼロベースの状態。なので、仙台の制作会社をたくさん受けたんですけど、実務経験もないうえに、作品もなかったので、全部落ちてしまいました。

―それからどのようにしてこの職に就くのですか?

当時は考えが浅はかだったので「東京に行けば何かあるだろう」というノリで上京したんです。そしたら、とある会社の社長さんにたまたま拾ってもらって、半分修行のような形でこの仕事を始めるようになりました。そこでは主に、テンプレートを使って、デザインデータで月80個ぐらいのWebサイトを作っていました。初日から案件を持たせてもらったのですが、もちろん何もできなかったので、隣の席の先輩に「どうやるんですか?」って聞きながら、無理やり学んだような感じで(笑)。それから数カ月経って、当時の社長さんが仙台に新しく制作会社を立ち上げることになり、2015年の1月から仙台の新しい事務所で働き始めました。ここでもWebデザインの仕事がメインでしたが、いわゆるベンチャー企業だったので、最初の頃は、電話営業をしたり、自家用車で営業に行ったりしましたね。そのおかげで、地元のクライアントさんからも徐々に案件をいただけるようになり、地元企業さんとのつながりも持てるようになりました。それから3年ほど経ち、ある程度のスキルが付いてきたあたりに周りのみんなが独立するということになったので、自分も次の道に進もうと思い、2017年10月にフリーランスに転身しました。

―フリーランスになってからは、どのような仕事を担当されたのでしょうか?

最初の数カ月は、前の会社からのいわゆる「お祝い案件」でなんとか食いつなぎました。請求先が会社から個人に変わっただけでしたし、あとは前の会社から「月○時間だけ力を貸してくれ」と頼まれ、手伝ったりもしました。ただ、会社とは違って家での作業なので、相談する相手もいない。とても孤独でしたし、さらには年が明けるとお祝い案件もなくなり、全く仕事もなくなってしまって…。やばい、どうしよう、そう思い悩んでいたとき、「株式会社湯治」という会社を、とある友人を介して紹介してもらったんです。この会社はその名前の通り、温泉に入って一定期間体を休める「湯治」を現代に広めたい、というテーマがあって、そこでWebサイトを作りたいということで力を貸したのですが、関わっていくうちに「せっかくだから内部に入ってくれ」ということになって、CTOとして携わることになりました。それから、会社で受注される仕事だったり、あとは元々本業を持った社長さんが数人集まってつくられた会社だったので、そこからのつながりでいろいろと案件をいただいたりもしました。光を与えてくれた友人には、今でもとても感謝しています。

―最近では、新たな事業もスタートさせたとお聞きしましたが?

今年6月に、湯治の役員の1人が「株式会社いきかた」という会社を立ち上げたのですが、その手伝いをしてほしいとのことで、現在、Webサイトの制作から全体のブランディングまで携わらせてもらっています。この会社では、主にアプリケーションの開発業務を行っていて、たとえば今やっているものだと、飲食店などの店舗がCMSと呼ばれる管理画面を使って、クーポンやプッシュ通知などを独自にカスタマイズしたアプリを作ることができる「てだすけ」というサービスの提供を進めています。ただ、アプリの開発はこれまでやったことのない分野。その都度その都度で勉強しながら進めていますが、知らないことが多いので大変ではありますね。

―独立以降、さまざまなことを手掛けてらっしゃいますが、当初描いていたプランとだいぶ違うのではないでしょうか?

全く想像が付かなかったですね。独立して数カ月後は、本当に先が見えませんでした…。でも、ありがたいことに周りの人に良くしてもらって、この仕事を続けることができましたし、その方々がまた違う人を紹介してくださって、そのおかげでどんどん仕事も広がっていきました。キーワードはやっぱり「人」。周りのみなさんには本当に恵まれたと思っています。

取材日:令和2年11月25日

取材・構成:郷内 和軌
撮影:豊田 拓弥
取材協力:SPECES仙台

前編 > 後編

大久僚一(おおひさ・りょういち)

1988年生まれ。大学卒業後は医療業界に就職。26歳からデザイン業界に転職し、都内・仙台のWeb制作会社にてデザイン業務を経て2017年にフリーランスに転向。クライアントの課題を解決するために、企画提案から制作・運営まで行っている。また株式会社湯治の代表取締役CTO、東北工業大学の非常勤講師、未経験の方々にデザイン講座を行う。RethinkCreatorとしても講師を勤めている。

ページトップへ

Search 検索