クリエイターインタビュー|髙橋 聡さん(前編)
仙台の伝統工芸品である堤焼の「堤焼乾馬窯」で修業した後、独立した陶芸家の髙橋 聡(たかはし さとし)さん。宮城野区宮千代にある工房「環窯(たまきがま)」で作品を作っている髙橋さんにお話を伺いました。
―今までのキャリアについて教えてください。
絵画をやろうと思って東北生活文化大学に入学したんですが、陶芸サークルに入ったら、楽しくなってしまって、本格的に始めました。大学卒業後、専門的な勉強をしたくて京都にある伝統工芸学校で3年間勉強しました。卒業後、堤焼乾馬窯で7年働いて独立して今に至ります。陶芸って、山奥で人と関わらないでやっているイメージが当時ありまして、そういうのがいいなぁと思っていたんですが、実際にやってみると一人じゃ無理だなというのは感じますね。
―伝統工芸学校では、具体的にどんなことをするのですか。
僕は陶芸専攻なのですが、一応普通の座学みたいなのもあって、カリキュラムの半分以上がろくろとか陶芸に関するものでしたね。
―堤焼乾馬窯で7年働いて、独立するきっかけは何だったのでしょうか。
きっかけは震災です。家が被災して、建て替えないといけなくなって。それで、新築した家に工房を併設することになりました。
―現在のお仕事について教えてください。
独立して2年経たないぐらいなんですが、陶芸だけで生活するのは厳しいので、アルバイトもしています。朝早くからアルバイトをして、11時頃から陶芸の作業を始めます。終わるのは、18時~19時というのが、大体の流れですね。
―いつまでには陶芸だけで食べていくという目標はありますか。
一応、あと3年ぐらいと期限を切っています。ちょうどアルバイトを始めたのが、まだ堤焼乾馬窯に勤めているときで、そのときからちょうど10年。きりがいいかなと思って、そこまでにしようと思っています。
―製作の工程はどうなっているのですか?
例えば、形をつくるのであれば、一日それだけをやります。電動ろくろなどで形をつくったら一日乾燥させて、かんなという道具で削り出しの作業をします。
―今作っているものは何ですか?
特に決まったものはなくて、お客さんから注文があったものや、置いていただいているお店からリクエストされたものを作ることが多いですね。この筒花入れは、仏壇に飾るために最近注文受けたものです。
―以前、株式会社ナナイロの佐藤悠さんにインタビューさせていただいたときに、環窯さんにドッグフードの皿を作ってもらったと伺いました。
ちょうどこれが注文を受けて作ったもので、取り外しができるように作ってあります。うちも犬を飼っていまして、最初は足がくっついたものを作ったんですけど、それだと、シンクの中で結構邪魔なんですね。結構な大きさなので、上だけ取り外して洗えるように作っています。
―こうした着想はどういうところから、出てくるのですか。
どこからと言われると、ちょっと難しいですね(笑)。
手を動かしているときにひらめいたりとか、どこか出かけたときに見たものが印象に残っていて、こういう風にしてみようという感じですね。
―特にこれを作るのが好きだというのはありますか。
特にと言われると、あまりないんですけど、丸い形を最近は意識して作るようにしています。そこに並んでいる球体がそうで、輪挿しとそうでないものもまざっているんですが、これは、河原町にいるステンドグラス作家の方の注文で。「ランプの土台を作ってください」と言われて作ったものです。
―トルコブルーの釉薬を使うことに決めたのはなぜですか。
もともとトルコブルーをメインにしようとは思ってなくて、茶色とか結構好きで作っていたんですけど、トルコブルーの方が反応がよかったので割合的に増えてきている感じです。
―埴輪も作っていらっしゃいますよね。
これはまだ始めた当初、作品を焼く時に窯を埋めるためにつくったものです。一度、焼くのに満杯で焼くのも、一個だけ焼くのも燃料コストは同じなので、どうせだったら、何か焼きたいなって思って作りました。
―こちらの工房では体験もできるのですか?
陶芸教室メインという感じではないんですけど、陶芸をやってみたいという人が結構いるので、そういう方に向けて陶芸教室もやっています。
―これからチャレンジしていきたいお仕事はありますか?
河北工芸展で昨年入選したんですが、仕事の幅が広がるので、そういう公募展とかに出展し続けたいなとは思っています。
―髙橋さんのフェイスブックを拝見したら、三越の「むつめく東北」、TBCの住宅展示場での「ミニ焼き物フェア」などに出展されていましたが、そういう催事は増えてきているのですか。
結構増えてきています。「むつめく東北」は、先程の佐藤悠さんからの紹介です。TBCのハウジングステーションでやらせていただいたのは、以前に、杜の都クラフトフェアの主催者の方の紹介でした。
―人とのつながりですね。
そうですね。うちの窯の名前「環窯」の環という字は、人とのつながりとか、そういうものを大切にしていきたいと思って付けました。人とのつながりが、窯の屋号らしくなってきていると感じますね。
―地元の方とお付き合いはあったりするんですか。
近所の人との付き合いはそれほどあるわけではないですが、中には興味を持っていただいて、ふらっと来てくれる人がいます。僕には2歳になる娘がいまして、娘が生まれた後に独立開業したので、娘の成長に合わせて人の環も増えていったら面白いと思っています。
取材日:平成29年7月26日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)
構成:岡沼 美樹恵
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髙橋 聡
堤焼乾馬窯4代針生乾馬に師事
2015年 環窯開店