クリエイターインタビュー|門山 夏子さん(前編)
仙台生まれ、仙台育ちのプロカメラマン 門山夏子(かどやま なつこ)さん。現在は個人事務所「門山写真事務所」を屋号に活動している門山さんに、カメラマンになったきっかけや、仕事の難しさ、楽しさなど、さまざまなお話を伺いました。
―カメラマンになろうと思ったきっかけはなんですか。
父親がカメラマンなので、小さい頃からその職業が身近にあったことは間違いなく影響していると思います。高校生の時からは仕事の手伝いもしていたので。ただ、当時はカメラマンになろうと思っていたわけではなかったんです。そういうことを考えたのは、専門学校を卒業した後でしたね。
―お手伝いはどんなことを?
機材運びや照明といった細々した手伝いをしていました。
―専門学校では写真の勉強をしていたのですか。
写真ではなく、デザインを学んでいました。
―どうしてデザインを学ぼうと思ったのですか。
高校の時に陶芸をやっていて、つくったりすることが好きだったんです。あとはその学校がとても面白そうだなと思ったことと、先生と生徒の距離が近いという校風に惹かれて入りました。今でも、講師で来ていた先生との交流があるんですよ。
―卒業後、なぜ写真をやっていこうと考えたのですか。
家計を支える父の姿を見て、カメラマンっていう仕事はすごいんだな、立派な職業だなと幼いころから思っていたんです。なので、卒業を機に私もちゃんとこの仕事に向き合ってみようかなと、本格的にカメラの仕事を始めました。それが20歳くらいの時です。
それまでは、何を仕事にしようかということをあまり考えずに、ぼやーっとしていたので、今思えば、父もそれを気にして、私に手伝いをさせたりしていたのかなと思います。
―お父様はどんな反応でしたか。
喜ぶというよりは、「え、やるの?」みたいな感じでした。自分が苦労しているので、子どもが同じ苦労をするのは複雑だと言っていましたね。
―カメラマンは機材をそろえなくてはならない分、初期費用もかかりますよね。
かかりました。私は、初めは父から機材を借りることができたので、なんとか始められましたけど、最初から自分でそろえるとなったら厳しかったと思います。それに、デジタルカメラは買い替えも多いので、初期費用以外にもお金がかかるんです。フィルムカメラは買い替えのサイクルが長かったと思うんですけど、デジタルカメラは、性能がどんどん変わっていくし、カメラ自体精密機械化していて、寿命が短くなった気がします。
―今使っているカメラは何台ぐらいですか。
メインと予備で、2台です。ほかのカメラマンさんはもうちょっと持っているんじゃないかなと思います。
―レンズはどれくらい使っていますか。
私は4本ぐらいです。レンズは望遠や接写、ほかにもいろいろあるのでたくさん欲しいのですが、予算が限られるので、中古とか、ネットのオークションとかでできるだけ安く買っています。レンタルする人も多いと思います。
―今のお仕事はどういうものが中心ですか。
カタログの撮影や雑誌の取材もの、あとは、大学や企業のパンフレットの撮影が多いです。私も含め、仙台のカメラマンはみんな幅広く仕事を受けているので、このジャンルだけということはないですね。
―どのようにお仕事を依頼されることが多いですか。
私の場合は、雑誌やウェブメディアのデザイナーさんから直接声を掛けていただくことが多いです。あとは、広告代理店さんからお仕事をいただくこともあります。
―門山さん自身で営業活動をすることもあるのですか。
仕事が少ない閑散期に、誰かに紹介してもらって仕事をいただくことはあります。それ以外は、営業らしい営業はしていないですね。どこかの現場で一緒だった方や、アシスタントをしていた時にお会いした方など、これまでのつながりからお仕事をいただくことが多いです。あとは、飲み会つながりですかね(笑)。
―肉体的、精神的に辛い時期というのはありますか。
やっぱり、精神的に辛いのは閑散期ですね。とても不安になります。子どもの頃、父親がため息をついたり、「眠れない」と言っている姿を見ていましたが、その時の父の気持ちがよく分かります。
肉体的に辛いということはあまりないですね。朝から晩まで仕事という日もありますが、午後から1件だけという日もあったりするので、そういう日は事務所でデータ処理をやったりして、というふうに無理なく時間を使えていると思います。
―データ処理とはどのような作業ですか。
例えば、お店の取材であれば撮影した画像をPCに入れて、そこから納品するものを抜粋するとか、その画像を補正するといった作業です。モデルさんの撮影などで枚数が多い場合だと、一旦クライアントに写真を選んでもらってから補正作業をすることもあります。
―写真を撮るときの、自分の中での流れとか、気を付けていることはありますか。
落ち着いて撮る、ということですね。私は結構、気が弱いところがありまして、現場で急かされたりすると、慌てて撮ってしまいがちなんですね。ただ、「どう撮ろうか」って考える時間はきちんと取りたいんです。なのでいつも「落ち着いてやろうね」と自分に言い聞かせながら、焦らずに吟味するよう心がけています。
―実際に、撮り始めるまでどんなことに時間をかけますか。
光の当たり方を見ながら、撮る方向を決めたり、アングルや絞りを決めたりといったことですね。ただ、スタジオのような場所であれば落ち着いて撮れるんですけれども、お店の取材とかですと、お客さんの出入りがあるので、吟味するとは言ってもそんなに時間はかけられないんですね。やっぱり少し慌ててしまいます。
それもあってか、周りからは「撮影が早い」って言われるんですよ。おそらく取材される側からしたらほめ言葉として言ってくださっているんです。ただ、私としては「それって大丈夫なのかな」と思ってしまいます。手抜きをして撮っているわけではないですし、ましてや落ち着くように心がけているのに、それでも慌ててしまう部分が勝っているのかなと。なので、その辺はこれからも特に心がけていこうと思います。
門山 夏子
創表現研究所est デザイン学科 卒業
フリーランスの広告カメラマン
現在の主な仕事は、店舗取材、webコンテンツ、学校・企業パンフレットなど
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