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クリエイターインタビュー|沼田 佐和子さん(前編)

早稲田大学を卒業し、編集プロダクションやフリーランスで活動した後、現在は月刊カフェラテで主にライティングの仕事をしている沼田佐和子(ぬまた さわこ)さん。仕事と子育ての両立や被災地復興への思いについてお話を伺いました。

 

-これまでのキャリアについてお伺いします。

 早稲田大学を出て、その後地元に戻って来ました。1年くらい子育てに専念した後、編集プロダクションで67年旅行誌の制作を経験し、約1年半のフリーランスを経て「月刊カフェラテ」に入社しました。

-月刊カフェラテさん自体は新しいんですか?

 2005年頃の創業です。立ち上げからしばらくは前の代表が一人でやっていたんですけど、3〜4年前から人が増えて今のような体制になりました。主な仕事は広告制作です。ポスターやチラシ、学校案内やパンフレットなどをつくっています。代理店さんからいただくお仕事が多いですね。

-前に所属されていた編集プロダクションも、カフェラテさんと同じくらいの規模ですか?

 そうですね。規模は56人で同じくらいでしたが、デザイナーがいない編集に特化した会社でした。100字くらいの旅行記事をひたすら書くことで、編集者としての基本的なスキルや役割を身につけていきました。

-旅行誌の取材って、旅行気分で行ける訳でもないし、知っている場所を何回も回るんですよね?

 同業者は、「東北六県、だいたい周ったわよ!旅行じゃなくて、取材で(笑)」という人がほとんどじゃないでしょうか。「楽しそう」とよく言われますが、実際取材は楽しいですよ、取材は(笑)。その後、会社を辞め、フリーランスになりました。

-フリーランス時代は、どんな仕事をされていたんですか?

 代理店さんからいただくライティングのお仕事が多かったです。仙台市さん関連で言うと、「手とてとテ」でも書かせていただきました。

-今の会社には、どんな経緯で入られたんですか?

 フリーランス時代に、(月刊カフェラテの)前の代表と仕事をする機会があり、広告制作のダイナミックさに触れたことがきっかけです。「これの広報をやって」というばくぜんとした依頼を、デザイナーやコピーライター、カメラマンがアイデアを出し合いながら形にしていくことがすごくおもしろそうで、自分もやってみたいなと思ったんです。

-私たち(=インタビュアー:市役所職員)は普通の「サラリーマン」なので、あまり業界のお仕事の想像がつかないんですが、出版や広告の業界は今どのような状況なんでしょう。

 広告費が削減傾向にあるので、業界的には厳しいです。フリーのライターさんは減ってきているのではないでしょうか。会社は会社で、新しい人を雇ったり、自己投資をしたりするゆとりが少なくなってきているように感じます。
 また全体を見てクリエーションできないと、厳しい業界になりつつある気がします。ライティングだけ、デザインだけの場合は、高いスキルが求められます。

-一方、東京には「書くだけの人」「デザインだけの人」っていっぱいいるわけですよね?「それを束ねるだけの人」もいる。

 東京との一番の違いってそこだと思います。東京には人物を撮るだけのカメラマンがいて、それも「モデルだけ」「子どもだけ」と細分化している。物撮りをするにも、料理だけとか。仙台だと、人も物も全部撮らないといけない訳ですよ。コピーに関してもデザインに関しても同じで、全部できないと仕事を取りこぼしてしまい、結果続けて行くのが難しくなる。
東京と仙台では、流通している仕事の量が圧倒的に違うということです。

月刊カフェラテの社内

-仙台で広告の仕事をするメリットはありますか?

 いろんな仕事が経験できることです。たくさんの人に見てもらえる仕事にも手が届きやすいし、いろんなスキルを身につけることができます。
 震災後、被災企業さん向けの助成金が結構あったりして、クリエイティブ活用の意識が高まってきていることも大きな可能性だと思います。

-市役所でも「デザインを活用しましょう、そしてちゃんとデザイン費を払いましょう」という啓発事業を始めました。

 いい取り組みですね。デザインとかコピーって、何故か「お金を払ってやってもらうこと」という認識が薄いので・・・。印刷物のように目に見える形になっていればまだ話は違いますが、企画とかディレクションとか目に見えない作業がたくさんあることは、なかなか理解してもらえません。家族につくったものを見せても「あなたはこの雑誌の何をつくったの?」って聞かれますから。「企画を考えて、キャスティングして、現場に行ってディレクションした」と言っても「で、一緒に行って何したの」って。(笑)
 こういう仕事で食べて行くためには、もっと業界全体の仕事量を増やさないといけない。そのためには、市場の動きを待っていないで、こちら側から働きかけていく必要があるんでしょうね。

-行政は、さまざまな課題を突き付けられていますね。

 山形は、東北芸術工科大学(以下、芸工大)ができてアートやクリエイティブに対する理解が広く深くなりましたよね。それはトップレベルのクリエイターが芸工大に来るようになって、行政に対してもたくさんアプローチしたからで、私たちにはそういう働きかけが足りていないんだと思います。
 ただ、そのためにはさまざまな分野の人と一緒に動く必要があって、注力し過ぎると本業であるコピーライターの仕事に専念できなくなる可能性もあるんです。今は、今の仕事をがんばりつつ、長い時間をかけてじっくりと動かしていきたいなと思っています。

 

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沼田 佐和子

コピーライター&ディレクター。広告やPRの企画制作、情報誌や大学案内、パンフレット等の制作を手掛ける。

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