ライターバトン -13- 「苦あれば楽あり、ライター稼業」
仙台を中心に活躍するライターが、リレー形式でおくります。前任ライターのお題をしりとりで受け、テーマを決める…という以外はなんでもアリの、ゆるゆるコラムです。
苦あれば楽あり、ライター稼業
フリーランスライターになって15年目に突入しました。
これまで取材をし、原稿を書いた件数は
数えたこともありませんが、おそらく軽く4ケタには突入していることでしょう。
私自身、どちらかと言えば人見知りで、人付き合いが苦手な方です。
そんな自分が不特定多数の人から話を聞き出すこんな職に就き、
15年も続けてこられているのは、我ながら不思議な気がしています。
ですが、仕事の時はどうやら体のどこかに仕込まれたスイッチが自動的にオンになるよう。
普段の人見知りな自分からは考えられないような力が湧いてくるのです。
いつもと違う自分になれるライターという仕事、実は案外気に入っています。
そんな私がこれまで携わった取材の中で、
楽しかったもの、大変だったものって何だろう? と振り返って考えてみました。
件数が件数なので、忘れてしまっているものも当然ありますが、
パッと思い浮かんだ「楽しかった取材・第1位」「過酷だった取材・第1位」を発表したいと思います。
【楽しかった取材・第1位】 ドッグカフェ取材with愛犬ズ
約10年前、某タウン誌の特集で、仙台市内のドッグカフェを何軒かまわって取材しました。
何とこの時、モデル犬として抜擢されたのが、私の愛犬の「すず」と「ハル」。
なにぶん田舎者なので、ドッグカフェなど行ったことがなかったふたりです。
最初はおずおずと匂いをかぎまわったり、他のワンちゃんにびくついたりしていましたが、
慣れると興味津々かつ我が物顔に店内を闊歩し始めました(笑)。
一番面白かったのは、ドッグカフェ併設のドッグランで、泳ぎを初体験させてもらったこと。
大きなビニールプールの中で必死に犬かきをするふたりの姿に大爆笑したっけ。
また別のドッグカフェでは、オシャレなカフェ飯をおいしそうに食べるふたりにほっこり。
2頭をハンドリングしながらお店の方に話を聞き、
さらに2頭の撮影補助もしなければならず、そういう意味では結構大変でしたが、
可愛い愛犬を連れての取材なんてそうそうあるものではありません。
新鮮で忘れられない取材の一つになりました。
ふたりが掲載された雑誌は、今も大切に取ってあります。宝物です。
【過酷だった取材・第1位】 出羽三山 山伏修行体験取材
こちらはフリーになりたてのころ。
出羽三山を舞台とした1泊2日の山伏修行を自ら体験し、
レポートするという某旅行雑誌の特集記事でした。
8月の酷暑の中、白装束にわらじ履きのスタイルで、修行の一端を体験。
だいぶ昔の出来事なので、事実と違って記憶している部分もあるかもしれませんが、
確かこんな修行内容だったと思います。
初日は、2446段の石段を早足で一気に登る羽黒山抖(と)そう行。
日ごろから運動不足だったため、心臓バクバクできつかったのを覚えています。
その後、滝に打たれ心身を清める水垢離(みずごり)の修行。
夜は宿坊に宿泊し、密室で南蛮やドクダミをいぶした煙にただただ耐える忍苦の行を受けました。
2日目は月山抖そう行へ。8合目から山頂まで、やはりひたすらに登るのですが、
ごろごろした岩が転がる急斜面をわらじで歩くのは予想以上に大変!
汗を噴き出しながら、置いて行かれないよう付いていくだけで必死でした。
最後はたき火の上をジャンプして超える火渡りの儀式で修了。
この間、一汁一菜のみの食事が朝と夕の1日2回だけ。空腹と疲れでフラフラになりました。
でも、俗世界から離れての修行で、ひと皮むけた自分に出会うことができた気が…。
その時は「つらい」のひと言でしたが、今にして思うと貴重な体験だったなぁと思います。
さて、この先にはどんな楽しい取材、過酷な取材が待ち受けているのでしょうか。
いずれにしても「一期一会」の精神で、取材道に邁進していきたいと思います。
次回
さて、次回は「う」から始まるキーワードで、関東博子さんにバトンを渡します。彼女とは、某出版社に入社したのも同時期ならば、退社したのも同時。フリーになったのも同じタイミング。こんな同期がいること、いつも心強く思ってます。旅好き女子の関東さん、また面白い旅話聞かせてね!
-12-「望遠鏡を逆からのぞく」> -13-「苦あれば楽あり、ライター稼業」>-14-「海をわたって」
鎌田 ゆう子
フリーランスライター。仙台市太白区出身。
東京の大学を卒業後、仙台の出版社に6年間勤務し、編集に携わる。その後、独立しフリーライターに。無類の犬好きで、すず(♀・13歳)、ハル(♂・11歳・)、ねね(♀・6歳)という3頭のビーグル犬とともに暮らす。趣味はインスタ。好きな言葉は「待てば海路の日和あり」。