クリエイターインタビュー|菊池 恭平さん(後編)
仙台にある株式会社 comme-ntで、イベントオーガナイザーなどの仕事をされている菊池 恭平(きくち きょうへい)さん。「音楽に関わる仕事がしたい」という漠然とした気持ちを抱きつつも、大学卒業後は人材派遣会社や広告会社でサラリーマンをしていました。そんな菊池さんが、イベントオーガナイザーとして音楽の仕事を始めたきっかけ、そしてその仕事に懸ける思いを伺いました。
─現在、comme-ntではSAIKOROの事業のほかにどのような仕事をされていますか。
広告の営業だったり、あとはプロデューサーという形でプロジェクト全体を統括するような仕事が多いですね。
─仕事をしていて、つらいと思うのはどういうときですか。
毎日ですね。毎日つらいです(笑)。
─毎日ですか(笑)。
はい。みんな仕事は楽しくしなきゃって言うけど、楽しいのなんてごく一部ですよ(笑)。
─肉体的にというよりは、気持ち的につらいことが多いのでしょうか。
両方ですね。大体追い込まれてます。目の前のことに一生懸命になりすぎて、割り切ることができない性格なんですよ。「この金額ではここまでしかできません」みたいに言えたら良いんですけど。余分なことまでやっちゃったりとか、気を使いすぎたりして。そういうので1人錯乱状態みたいになって、つらい時がありますね(笑)。
その代わりじゃないですけど、「忙しい」「つらい」って周りにアピールしてるんです。「忙しいって口にするのはかっこ悪い」ってよく言いますけど、僕はがんがん言います。優しくしてほしいので(笑)。
─音楽の仕事でもつらいですか。
やりたいこととはいえ仕事なので、楽しいことばかりではないですよね。でも、やっぱりライブを見ると、「すごい!」って思うんですよ。アーティストのライブって1回1回が本当に素晴らしくて、そういうのを見ると、いろいろ大変なことがあってもまたやりたくなりますね。
─お休みの日も、ライブに行ったりするんですか。
そうですね。何かあれば行きますけど、基本的には家族と一緒にいることを心がけています。最近になって、ようやくですが。
─ようやく…ですか?
以前は全く。ずっと働いていました。今、子どもが小学6年生と1年生なんですけど、上の子が小さい頃はほとんど家にいなかったんじゃないかな。最近になって、子どもが大きくなっていくのを見ながら、「この時期はもうこれが最後なのか…」って思ったらすごく切なくなるんですよね。だから、今は家族といる時間を大切にしています。
─音楽を仕事にすると決めたとき、家族から反対はなかったのですか。
その話、よく言われるんです。音楽の仕事なんて儲からないって思っている人も多くて、どうやって儲けるのってよく言われますしね。家族は優しく見守ってくれているというか、あんまり何も言わないですね。本当に感謝しています。
だからこそやっていることをちゃんと形にしたいし、それをたくさんの人に届けて、良いものだってわかってほしいなと思っています。
─仙台で仕事をしていて、仙台にはどんなイメージがありますか。
仙台から何か始まるっていうことは少ないかもしれないですね。仙台ならではみたいな。大きいお祭りとかはあるけど、小さい規模感のものは少ないかもしれないなっていう気がします。
─こういうまちになってほしいという期待はありますか。
ライブに人が集まるまちになってほしいです。ライブに行くのがよそ行きな感じではなく、もっとラフな感じで、ちょっと帰りにお酒飲みながらライブ行ってみようかみたいな。じゃないと商売あがったりなんで(笑)。もうちょっと遊びのあるまちになって、そこにお金が落ちるるようになると良いなと思っています。
─行政に求めることはありますか。
役所の人が全員ライブに来てくれれば良いなって思います(笑)。あとは、行政で持っている施設をもうちょっと使いやすくしてもらえると、経済が回るんじゃないか、と。もっと気軽に場所を借りてライブができるようになれば、音響さんを始めいろいろなところに仕事が入るし、遠方からも人が来るし、ライブの後に外食する人もいるし…。それが遊びのあるまちにつながっていくのではと思っています。
─ライブハウス以外ではどんな場所を使っていますか。
カフェや飲み屋さん、最近だと、喫煙できるラウンジでもやりました。ライブができる場所っていっぱいあると思っているんです。ただ、集客の問題だったり、あとはやっぱり、音の問題がネックになってしまう。なので、そういうことがまちの人に受け入れられていったら素敵だなと思います。何か良いじゃないですか、まちに音が鳴り響くって。自分が受験勉強中だったら嫌かもしれないけど(笑)。節度は守りつつ、いろいろな場所でライブができれば良いなと思います。天文台もそうですけど、会場ごとに雰囲気が全く違うので、そこをうまくマッチングさせることでより魅力的なライブを企画していきたいですね。
─仙台でいつかやってみたいことはありますか。
奇妙礼太郎さんとbonobosの蔡さんには、自分の思い入れがあるので、2人がもっと多くの人に注目されるイベントを仙台で企画したいなと思っています。あとは、他にも良いバンドがたくさんいるので、自分の紹介したいバンドだけが出るイベントを大きい規模でやりたいと思っています。
─屋外での開催も考えていますか。
野外ライブの良さもあるので、もちろんしたいですね。海とか、そういうシチュエーションをよく考えます。夕暮れどきにこの歌が流れて…みたいな。意外にロマンチストなんです。あとは、深夜の森で球体オブジェをふわふわ浮かべたりして、幻想的なライブをやったりとかも良いですよね。仙台は海も山もあるので、シチュエーションはいろいろ作りやすいですよね。
─ぜひ実現してほしいですね。最後に、クリエイティブ分野で働きたい人、勉強中の人へアドバイスをお願いします。
まずやってみることじゃないですかね。やらないと分からないじゃないですか、クリエイティブって。まずは、自分の世界観だと思うので、認められなくてもやるのか、認められたくてやるのか、いろいろあると思うんですけど、そういう自分を知るためにも、まずはやってみると良いのかなって思います。働いてみたいっていう人がいたら、「働いたら」って言うしかないですよね。まずは。
ここまで来て言うことでもないですけど、僕で良かったんですかねインタビュー(笑)。
菊池 恭平
仙台市出身、仙台市在住。
震災までは、広告関連の平凡なサラリーマン。震災後に、音楽を仕事へ、5年前にSAIKOROを立ち上げる。
3年前から株式会社comme-ntにSAIKOROごと合流し、現在に至る。現在は、プロデューサーとして広告関連の仕事に携わりながら、SAIKOROとして音楽イベントの企画・制作を行う。
よく目が笑っていないと言われますが、笑ってますし、基本、温厚です。お間違いなく。
SAIKORO WEB : http://saikoro7.com/
comme-nt WEB : http://www.comme-nt.co.jp
- Twitter : https://twitter.com/saikoro_info