クリエイターインタビュー|桜田 涼平さん(前編)
広告制作や広告企画・企業経営サポートを手がける株式会社グラフィック・トイに入社して3年目を迎える桜田涼平(さくらだ りょうへい)さん。2018年の仙台広告賞新聞部門で賞を受賞された期待の若手デザイナーでもある桜田さんに、受賞したイラストのエピソードや現在手がけられているお仕事についてお伺いしました。
―ご出身はどちらですか?
専門学校進学で仙台に来るまでは、生まれて18年間ずっと秋田です。秋田県秋田市の、ほんとに回りに田んぼしかないような小中一貫校に通ってました。全校生徒も、小学校のときは72人とかで、中学校に至っては、全校で30人くらいしかいないようなところでしたね。
―もともと絵に興味があったのですか?
そうですね。もともと絵が好きで、家とか学校の休み時間に描いたりしていました。でも、最初のきっかけは、中学校のころの美術の先生がすごくいい先生で、その先生との時間をいっぱいつくりたかったからなんです。家で何か描いて、放課後その先生に見せに行ったりしていたら、普通に描くことそのものが好きになっていました。
―どんな先生だったのですか?
非常勤で毎週水曜日しか来ない男の先生でした。すごくフランクな感じで、よく「桜田は何かに変にこだわる、変態じみてる」って言われたんです(笑)。それが自分にはすごく褒め言葉に感じたし、何かそういうふうにいじってもらえるのも嬉しいなと思って、いろいろ描くようになりました。
―専門学校進学を決めた経緯を教えてください。
その先生がきっかけで美術の先生になろうと思って、美大へ行くためにデッサンの画塾に通ったり、センター試験の補習とかもいろいろ受けて大学受験もしました。でも、美大って学費がめちゃくちゃ高いんですよ。親に「美大に行きたい」って朝に言って、学校から帰ってきたら、無言で学費のページが印刷された紙が机の上に置かれてて。「学費で家買える」って言われて(笑)、あきらめました。
―そんなに高額なのですね。
1年で学費が400万くらいで、プラス画材などの雑費がかかるんですよね。それで、国公立で探して、だめだったら専門学校に行きます…という話でまとまって。高校卒業後に、若林区新寺にある「日本デザイナー芸術学院仙台校」のグラフィックデザインコースというところに行きました。
―専門学校卒業後、すぐにこの仕事を始めたのですか?
はい。今一緒に働いている同僚が学校の1つ上の先輩だったので、そのつながりもあって学生のときにインターンに来て、そのまま声をかけてもらって入社しました。最初は東京に行きたいなと思ったりもしたのですが、それって結局学生の時の上っ面な願望でしたね。僕は個人的に絵を描いたりもするので、同人誌とかコミケとかそういうイベントも東京だったらアクセスがいいし、いろんなのに参加できるんじゃないか…っていう淡い希望だけで行きたいと思っていたんです(笑)
―フリーランスでやっていこうとは思わなかったのですか?
全然考えていませんでしたね。学校で学んだことは基礎中の基礎で、とりあえずお箸持てるようになったくらいのレベルの話で。その箸をどう使うかというのは、社会に出てから学ぶんですよね。なので、会社の先輩とかいろいろな人に教えてもらいながら、学んでいこうかなと思いました。
―肩書きはアシスタントデザイナーとなっていますが、どのようなことをしているのですか?
最初の頃は文字の直しなどをやっていました。最近は人数も少なくなった分、一人一人が機動力を上げていかなきゃいけないので、グラフィックもやりますし、自分たちの会社で企画したイベントの運営とかもやって、車で地方に行ったり、打ち合わせに行ったりもしています。あと、僕はイラストも描けるので、表現の手法としてデザインの中にイラストレーションを入れてみたりしていますね。
―自社企画もやっていらっしゃるんですね。
はい。例えば、2018年4月14日のベニーランドさんの50周年記念企画ですね。もともと僕が入社する前からいろいろ話をしてきて、ティザーの時期から僕も実際に参加させてもらって。イベント運営の一員となって企画を動かしたり、着ぐるみに入ったり、広告をつくったり。顔出しパネルとか、グッズデザインとかにも携わらせていただきました。
―桜田さんご自身で動かしているお仕事もあるのでしょうか?
社内で担当を振り分けているので、その自分の担当を動かすのがメインです。最初のアイデアの部分は見てもらいますけれども、一応いろいろ任せてもらってる感じですね。デザインも企画立案もまだまだ勉強中なので、弊社の代表がやっているものや先輩の企画書を見せてもらいながらやったり、先輩が受けた仕事の中で、「じゃあ、あなたも1個デザイン案出してみる?」みたいな話を受けたときに、いろいろ考えさせてもらったりする感じです。
―仕事の中で学びながら日々成長されているんですね。
まだこの業界に入ったばかりの新米として見てきた中で、「多分こうだろう…」とつくったものに、何回も「これ違うでしょう」ってダメ出しされちゃうこともあるんです。その分いろんなものを見たり聞いたりして吸収することも多いし、もしそれが通ったり、「いいね」と言ってもらえると、おもしろさや、やりがいに変わるのかなと思います。振り返ってみると、入社当時と比べてできることや話し方も変わったなと思うんです。
―今はどんな案件を担当してるんですか?
「仙台あおば学舎」さんという学習塾の冬期講習や夏期講習のポスターなどを手掛けています。一番最初の部分は、弊社代表が限定的にディレクションして、その後の作業とか、実際のスケジューリングや打ち合わせなどを僕が担当する感じです。あとは、栗原市の婚活支援も担当していて、これまで全部で3回セミナーをやってますね。その中でお料理教室みたいなことをやった回があったんですが、そのときは会場をセッティングして、朝早くから調理室で男4人でゆで卵を大量に茹でたり(笑)。結構、内勤だけでなく外にも出てますね。デザイナーって、室内でつくってるイメージが学生のときはあったんです。でも、会社でいろいろ教えてもらったのは、マッキントッシュ使ってやるのは誰でもできることで、技術以外のことのほうが大事なんだ、ということですね。
―婚活のセミナーというのは、具体的にどのようなことをするのですか?
女性の魅力を上げようということで、例えば、開運講座や、元ホストの方を呼んで、男性心理から学ぶ女性の魅力アップとか。あとは、吉本興業所属のボルサリーノ関さんという開運飯をやっている方をお呼びして、料理で恋愛運アップとかですね。メイクとかも教えてもらうので、参加者のみなさんが回を重ねるたびにどんどんきれいになっていくんですよ。
取材日:平成30年11月20日
聞き手:仙台市地域産業支援課、岡沼 美樹恵
構成:岡沼 美樹恵
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桜田 涼平
1996年秋田県秋田市生まれ。
2017年専門学校 日本デザイナー芸術学院 仙台校 デザイン学科卒業。
同年インターンシップを経て株式会社グラフィック・トイに入社。
広告全般からイラストレーション、イベント企画運営、CM、プロモーション企画など
チーム一員として携わっている。
アニメと漫画を見ること、描くこと、ラーメンとお酒が大好きです。
第17回デザイングランプリTOHOKU 東北地区印刷協議会会長賞受賞。
2017年度 仙台広告賞新聞部門銀賞 メインビジュアル担当。