私と「熱」
毎月文化祭があって、常に全力でその準備をしているような生活を送っている。
しかし、その準備に参加しない同じクラスの男子がいたり「どうせうまくいきっこないよ」と余計な言葉をかけてくる隣のクラスの女子も登場したりする。
彼らを睨みつけるのに疲れた時は、手を動かすのを諦めてしまうものだ。
学生時代から10年以上、絵や文章をつくることを続けているが、熱がサーッと引いてしまう時期が何度もあった。「こんなに熱心に頑張っているのに」だけでは共感や評価を得ることが出来ないのが、つくる行為の面白さであり、つらさでもある。
基本、つくる行為ってのは地味なのだ。
しかし、今まで何度も悔しい気持ちになっているのに、今日も明日も、最高の文化祭を迎えるために私はずっと手を動かしている。熱意以外の全てをかなぐり捨ててもいい、とさえ思っている。
私が画用紙と睨み合い、ペンを握っている間も、クラスメイトだった女子たちは恋人と見つめあい、互いに手を強く握っていた。私が「もう嫌だ、一生なにもつくりたくない」と泣き喚いた夜に、彼女たちはナイトプールでオシャレなドリンクをたくさん飲んで、気持ちよさそうに過ごしていた。
みんなみんな、知っている。フェイスブックでこっそり見ていたのだから。
ひとりでも、みんなででも、何かひとつのものを作りあげるのは気持ちいい。
いつだって気持ちいいことがしたいのは、パーティーピーポーも、私も、一緒なのである。
Painter = 木村 良(きむら・りょう)
1952年宮城県生まれ、仙台市在住。
グラフィックデザイナー、美大生を経て現在は非常勤講師やフリーランスとして活動。
青木繁記念大賞展入賞やFACE展、上野の森美術館大賞展などで入選するほか、個展、グループ展も多数。
身の回りの自然や動物、名画をモチーフとするなど自由な画面構成と多様な試みで、絵画ならではの世界を追求している。
6月10日(木)までTURN ANOTHER ROUND(仙台フォーラス 7F)にて、絵画と陶芸展「じゆうになりたい。」開催中。
Writer = 昆野沙耶(恐山らむね)
1993年2月生まれ、仙台市出身。宮城大学 事業構想学部デザイン情報学科 卒業。
編集者・ライター。ときどきイラストレーター。
特定非営利活動法人 まちづくりスポット仙台 ディレクター。
勤務先の交流スペースに遊びに来る小学生と一緒になって遊ぶのが好き。
E-mail:osasimichan@gmail.com
note(仕事・作品まとめ):https://note.com/ossm_ls