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クリエイターインタビュー|阿部 加奈子さん(後編)

仙台市幸町の自宅サロンにてイタリア料理教室「Buon Appetito」を開催し、フードコーディネーターやオリーブオイルソムリエの資格も保有している阿部加奈子(あべ かなこ)さん。自分の「好き」を仕事にし、様々なシーンでご活躍されている阿部さんに、料理研究家というお仕事の内容や、イタリア留学の体験談についてお話を伺いました。

 

―講師として呼ばれることもあるそうですが、外部のお仕事は料理教室を始めた当初から依頼があったのでしょうか?

外部の仕事は、10年前にオリーブオイルソムリエの資格を取って、メディアに露出し始めてからが多いかもしれませんね。料理教室を始めて2年ぐらい経った頃、「オリーブオイルを買いたいけど、何を選んだらいいかわからない」という人がすごく多くて、それに対して私もはっきりと「これがいいですよ」と言うことができなかったので、じゃ、イタリアでもう一回勉強して資格取ろうと思ったんです。

―イタリアで取得されたのですね。

そうなんです。イタリアの現地資格を取ってきて。当時は現地でしか取得できない資格だったので、日本にまだ30人とか、それくらいしかいなかったんですよ。今は日本でも取れるようになったんですけれど、私は本当に最初の最初で、おそらく東北でも最初のほうだったので、そのときにメディアの取材がいっぱい来ていただいたんですよね。今は聖和短大で大学の先生もしているんですよ。

―オイルの輸入販売もされているとのことですが、それも自分で交渉するのですか?

そうです。イタリアで資格を取ったときに、何百種類もテイスティングをするんですけど、そのときに一番好きだったオイルがあって。「これを作っている人たちの顔を見てみたい!」と思って、シチリアのアグリジェントというところに行ったんです。本当無事によく辿り着けたな、というくらいのすごい田舎で、そこの町やオイルを作っているおじさんを見て、「ああ、すごくいい人たちだし、ここのだったら間違いないな」と思って輸入を決めました。私の好きなオイルで、本当においしいと思います。あと、オイルに限らず食材にもこだわっていて、丸森ですごくいい西洋野菜を育てているので、西洋野菜を購入するときは丸森町から仕入れることが多いです。最近は家庭菜園を作るところまで始めてしまいました。

         阿部さんが輸入販売されているオリーブオイル

―講師や商品開発などのクライアントワークでは何かお題があるものなのですか?

講師の仕事では、オリーブオイルのセミナーや、子どもたちのピザ教室、パン教室、あとは生パスタ講座をするんですけれど、先方がやりたいことに全部合わせてやったりもします。こういうのをやってくださいと言われたらそういう形でやるし、イタリアのおもしろい話を話してくださいと言われることもありますね。先日も高校の総会があって200人ほどの参加者の前で、私が留学していたときの話と失敗談、体験談をしました。あと以前は、某百貨店などでイタリアフェアがあると、イタリアの話をしてくださいという形でお話が来ますね。

商品開発は、私の場合は、その商品に対するメニューを提案するっていうのが多いですね。よくパッケージの後ろとかに書いてあるようなレシピの提案なのですが、この間お手伝いしたのは、勝山ネクステージ株式会社さんの無添加ソーセージのお仕事。いろいろな種類のソーセージが来て、それぞれのレシピや広告用のコーディネートを考えたりしました。フードコーディネーターの資格も持っているので、何かお洒落に飾り付けてみたりだとか、食事の空間トータルで提案することもあります。

勝山ネクステージ株式会社さんの無添加ソーセージのお仕事

―仕事の面白味はどんなところに感じますか?

料理はもちろん楽しいですし、料理教室の生徒さんに毎月会うのが楽しいですね。教室に来られる方は主婦の方が多いですが、男性の方もいらっしゃいますし、10年間ずっと毎月来てくださる方もいらっしゃいます。孫に作ってあげたいという人もいれば、旦那さんに作ってあげたいという人もいれば、子供に作ってあげたいという人もいれば、幅広いですね。あと、割と地産地消で頼まれることが多いのですが、最初は頭抱えるんです。白石温麺をイタリアンにしてくださいとか言われると、どうしよう…と頭を抱えるんですけど、刻んでケーキにしてみたんですよ。そういうのを作るとなんだか達成感がありますよね。

「白石温麺のケーキ」仙臺いろはウェブマガジンより

―印象に残っているお料理や思い出深い一品というのありますか。

やっぱり、その白石温麺のケーキ(*)ですね。「仙臺いろはのウェブマガジン」の企画だったんですけれど、白石温麺をパキパキ割って、タルトにしたんです。イタリアにスパゲッティのケーキというのがあって、それにインスパイアされて同じような感じでやったんですけど、タルト生地を作ってカスタードを置いて、上に白石温麺を乗せて。ちょっとしょっぱいのとカリカリとしているので食感が合っておいしいんですよ。

*「白石温麺のケーキ」のレシピはこちら

―印象に残っているお仕事は何ですか?

ミラノ万博が一番印象に残っていますね。東北の食材をミラノでプレゼンするというプロジェクトに関わらせてもらって、それはすごく面白かったです。お餅を使った一品を現地のマンマがレシピ化してくれてイタリアンにしてくれたり、東北のお酒とかをプレゼンしたりとか。トータル3週間ぐらいいたんですけど、予定通り荷物が届かなかったりとかして、始まる数時間前にやっと届いて大パニックっていうことがあったりしたから、印象深いですね(笑)。でも、みなさん東北の食材を、おいしいおいしいって言って喜んでくれて、嬉しかったです。

―料理そのものだけでなく幅広く活動されているのですね。ちなみに料理のアイデアがネタ切れになることはありませんか?

私はないですね。でも、やっぱり刺激を受けないとちょっと苦しくなったり閃きが停滞したりするときがあるんです。なので、毎年1年に1回、1ヵ月くらいイタリアに行っているんですが、それが気分転換になって一気にレシピが頭の中に入ってくるんです。滞在している間、とにかく毎日食べ歩くので、レシピのストックがいっぱいできるんですよ。

―おいしいものをつくるには、やはりおいしいものや新しいものを実際に食べることが大事なのですね。

料理って、とにかく常にすごいいいものを食べていなくちゃいけなくて、自分が食べた以上のものって作れないんですよね。だから、とにかくいいものを食べて、質を向上させないといけないというのはすごく心がけていますね。

―仙台でお仕事をされる理由は?

私、幸せなことに母方の実家が漁業関係で、父方の実家が農業なんです。だから、地の物でも海の物でも割と何でも手に入るんですよ。環境が最高で、のんびりしているし、仙台が好きなんですよね。それに、仙台は自分で何か食べたいと思ったらすぐ買いに行けたりするでしょう、車でちゃちゃっと。おいしい魚は石巻まで行ったら仕入れられるとか、おいしい山菜がほしいと思えば、山の方まで行けばいい。そういうところが気に入ってます。

―仙台でこれからチャレンジしたいことはありますか?

2020年のオリンピックのときに、イタリアのパラスポーツチームが来るので、もうちょっと何かイタリアに関わったことをしていきたいですね。イタリア人に限らず、外国人が来たときに地元の食材を使って料理教室をしたりとか、その人たちの要望に合わせて食べたいものを土地の野菜でつくったりとか、何かやっていけたらと思っています。インバウンド的な料理教室を求める人達も多いんじゃないかなと思うので。

-食べるだけじゃなくて作る「体験」ですね。

私は市場とかでどういうものが売っているのかとか見てみたいし、実際それを買って作りたいって思うんです。だから、そこまでが「体験」で、私はいつもそういうことができるところどこの国に行っても探します。だから、私もこの仙台でそういう「体験」を提供していきたいと思いますね。

―これからクリエイターを目指している人へ向けてメッセージをお願いします。

本当に自分の「好き」を仕事にするなら、「好き」という情熱をずっと持ち続けることが大切ですよね。そういう気持ちさえあれば何でもできるというか、辛いことも辛いことだと思わなくなるんじゃないでしょうか。

取材日:平成30年10月23日
聞き手:仙台市地域産業支援課、岡沼 美樹恵
構成:岡沼 美樹恵

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阿部 加奈子

AISO認定オリーブオイルソムリエ/コースディレクター
早稲田大学卒業後、食品会社に就職。退社後、フードコーディネーター資格取得。
イタリアに渡伊。イタリア各地に滞在し、料理学校、シニョーラから料理を学ぶ。
帰国後自宅サロンにて“イタリア料理教室 Buon Appetito”主宰。
オリーブオイルソムリエとしてセミナー・講演活動などを行うほか、
短期大学にて非常勤講師を務める。2018年フォカッチャ屋Buon appetito開店。

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