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クリエイターインタビュー後編|TAROUT(キャラクターアーティスト)

世界中で愛されるストーリーテラーは、
誰もが笑顔で暮らせる未来を描いていく

2021年に仙台へ移住されたキャラクターアーティストのタロアウト(TAROUT)さんは、さらにお仕事の幅を広げて活動されています。後編では、これまで手掛けられた作品や環境省のアンバサダーとしての活動などを振り返りながら、今後のお仕事や理想としている作家像に近づくために挑戦していることなどをお話しいただきました。

― 日本では、VOGUE GIRLというウェブメディアで展開されている『しいたけ占い』のキャラクターで、タロアウトさんのことを知ったという方も多いのではないかと思います。こちらのお仕事は、占い師のしいたけさん本人から依頼があったのでしょうか?

『しいたけ占い』の企画が持ち上がった時の編集長さんには、その以前から大変お世話になっていたんです。その方に「モード誌で可愛いキャラクターとしいたけを使って、異色の占い企画をやりたい」とお声がけいただきました。占い師さんが顔出しをされていないということもあって『しいたけ占い』のキャラクターを作ることになりました。
それが5、6年のうちに、口コミでこんなに人気が広がってしまうなんて。しいたけさんの占いは本当に素晴らしいです。

VOGUE GIRL / SHIITAKE URANAI (2014- )
[VOGUE GIRL しいたけ占い] https://voguegirl.jp/horoscope/shiitake/

― 人気キャラクターを生み出してしまうタロアウトさんも本当に尊敬します。

私なんて、しいたけさんのご商売にあやかっているだけですから。(笑)本当に素晴らしく素敵な方なので、ご一緒させてもらいとても楽しいです。今はもうクローズしていますが、当時は個人鑑定もされていたので私も一度占ってもらいました。診断書は今も大切に保管しています。今となっては本当に貴重な経験でした。

― 個人鑑定、羨ましいです!これまでのお仕事で、特に印象に残っている作品はありますか?

印象に残っているのは、FENDIさんの『リトル・シルヴィア』とPaul Smith SPACE GALLERYでの個展。それと、Diorさんのファインジュエリー『ゴルメットちゃん』です。
FENDIさんのキャラクターは、バゲットバッグ15周年記念キャンペーンとして世界で開催されたBAGUETTE MANIAの日本開催時、バゲットバッグにペイントした作品です。真っ白なキャンバス地のバゲットバッグがあり、そこにアーティストがペイントするという企画でFENDIさんのデザイナーであるシルヴィアさんをモデルにした女の子『リトル・シルヴィア』を描かせていただきました。その時にストーリーブックだけではなく、サプライズでフィギュアも作って会場に持ち込んだのですが「展示するスペースがありません」と言われしまったことも。

FENDI / SILVIA & BAGUETTE (2012)

― フィギュアはその後、どうされたのですか?

実はデザイナーのシルヴィアさんが、レセプションパーティーでストーリーブックを声に出して読んでくださり、さらに「このフィギュアは孫娘に贈りたい」とおっしゃってくださって。会場で展示されることはなかったのですが、フィギュアは無事私の元から離れていきました。

― 人の心を動かしてしまう物語のパワーは計り知れませんね。Paul Smith SPACE GALLERYでの個展はどのように実現したのですか?

数年来の友人に忘年会の席で「Paul Smith SPACE GALLERYで、個展をやりたい」と話したところ、友人がそこの日本人スタッフと知り合いだったことが発覚したんです。ポップでカラフルなところが男女問わず愛されているブランドで、私の作るキャラクターとマッチするのではないかと構想を温めていたので、友人と繋がっていたことにとても驚いたのを覚えています。
そして2011年1月開催のパリコレで、Paul Smithさんがポートフォリオを見てくださり個展の許可をいただけることになりました。

Paul Smith / BUNNY PAUL (2011-2012)

― 東日本大地震の年ですね。

Paul Smithさんはとても日本のことが好きで、毎年チームで春と秋に来日されています。震災後は原発事故の問題で出国が止められていたにも関わらず、Paul Smithさんは単身で「日本を応援したい」と日本に来られたんです。本当に尊敬します。そのタイミングで私とゆっくり話をしてくださり、2011年12月に個展を開催させていただきました。この経験は私の中で、この上なく幸せなお仕事になりました。
その後も直筆のお手紙を頂戴したり、絵をプレゼントさせていただくなど交流を持たせてもらっています。Paul Smithさんの半生を綴る『Hello, My Name is Paul Smith』という書籍には私の絵を掲載してくださり、もうめっちゃいい人!

― Paul Smithさんは、とても男気のある方なのですね。Diorさんの『ゴルメットちゃん』にも特別な思い入れが?

独立後はイラストのお仕事をいただきながらも、基本的にはデザインの案件がベースでした。そんな私の元に2006年、Diorさんのクリスマスキャンペーンでお声がけいただいたのを機に、私がイラストに専念できるようなチーム体制を整えることができたんです。
イラストレーションとして、生計を立てられるようになったきっかけであり、とてもメモリアルな案件になったなと思っています。これがご縁で、VOGUE GIRLの編集長さんやファッション系のお仕事と関わらせていただく転機にもなりました。

TAROUT Dior Fine Jewelry / Gourmette-chan(2006-2008)

― その転機が訪れたことで、菜園料理家 藤田承紀さんとのフード&デザインユニット『LUNNY'S VEGGIE(ラニーズベジー)』を結成することになったそうですね。

この頃の私は食生活がとても乱れていたので、友人に「料理をしなさい」と喝を入れられて、料理をするようになりました。なにせこの時自宅にあった調理器具は、やかんだけでしたからね。その状態では、注意されますよね。(笑)
それ以降、定期的に私の自宅で『タロ ア ターブル』という料理好きが集まる会を開催するようになったんです。もう140回ほど行っています。
その仲間に、自然農法や有機農法による野菜作りに取り組んでいる藤田さんもいらっしゃって、このユニットを組むことになりました。

― なんとも羨ましい限りです!子ども向けの作品ということで、苦労した点はありましたか?

私が作るキャラクターはデフォルメして描くことが多いので、そうした箇所に「赤ペン」が入りました。例えば「手を描く時は、五本指でないといけません」などの文言の表現にも独自の決まりがありました。20代の私は、そうしたところに気が回らないというよりも気付けなかったんですよね。赤ペン先生に沢山教わることができて、本当にいい経験でした。
赤ペン先生、ありがとうございました!感謝しかないです。(笑)

結成当時のタロアウトさん(右)と藤田さん(左)
[LUNNY'S VEGGIE] https://www.lunnysveggie.com

― 藤田さんとの交友をきっかけに、環境省のアンバサダー就任を決断されたとか。

藤田さんと交友があったことで、環境省から同じタイミングでお声がけいただいたのですが、私はそうした活動をしたことがない状態でした。「私がなっても良いのだろうか」と悩みましたが、普通の人目線での発信も必要かなと思い、アンバサダーになる決意をしました。

[環境省 アンバサダー]
https://www.env.go.jp/nature/morisatokawaumi/ambassador.html

― アンバサダーの仕事では、どんなことをされているのですか?

これまで「SDGsで、2030年までに実現したい世界はどんなだろう?」と、誰もが笑顔で暮らす社会を想像しながら活動を続けきました。現在は、ラニーズベジーで未来の笑顔をシェアすることと『SDGs=Small Daily Good(s)』をコンセプトに、誰もが楽しく取り組めるような『日々の生活の中でできる、小さくてもグッドな活動」を私自身も実践、発信しています。
お仕事の内容としては、環境省が発行する本の表紙やロゴマークを作らせていただいたり、2021年9月からはラニーズベジーでYouTube配信もしています。ここでご紹介する料理は、ラニーズベジーで少しずつ進めてきていた『エブリ1テーブル』。世界中のより多くの人と同じ料理を同じでテーブルで楽しめることを目標に、アレルギー食材の使用を控えた様々な食文化に配慮したものを作っていけるように取り組んでいます。

[LUNNY’S VEGGIE TV] https://www.youtube.com/c/LUNNYSVEGGIETV

― 現在、新たに取り組まれていることはありますか?

マネージメントも多様な仕事を柔軟に対応できるよう2体制になり、仙台に移住したあとは気持ち的にも少し余裕がでてきたので、これ機にずっと構想を練っていた絵本作りに取り掛かっています。
仙台に移住したからといって、必ずしも土地を題材として描きたいと思っているわけではなく、これまでにキャラクターたちへ吹き込んできた私のストーリーテラー性を活かし、SDGs活動の一端としていきたいです。登場キャラクターがうさぎなので、うさぎ年の2023年完成を目指しています!

― なぜ絵本にしようと思ったのですか?

私は結婚をしていなくて子どももいないのですが、次世代へ私のメッセージをどう伝えていくかを考えたんです。その時思い浮かんだのが、私が尊敬している作家のディック・ブルーナさんの絵本でした。『ミッフィー』は有名ですよね。
環境のことや多様性などを伝えるのに、子どもから大人まで分かりやすく伝えられるのは、絵本の強みだと思います。

― 今後、挑戦したいことを教えてください。

コロナ禍ではじめた趣味の一つにピアノがあります。将来、老人ホームで最後のモテ期を迎えるため、伴奏のレパートリーを30曲に増やすことが今の目標。(笑)
また私の理想としている作家像が先のディック・ブルーナさんなのですが、おしゃれでちょっとハイカラなんだけど、とてもチャーミングなところに憧れています。私もそんな素敵な叔父さんになって、絵を描いていたいです。
今はまだレパートリーが20曲もないので、憧れの作家像に近づけるように長期ビジョンで挑戦し続けていきます!

マネージャーの渡部さん(左)とは数年来の友人
ゴールド級に息ぴったりなお二人

取材日:令和4年1月19日

取材・構成:太田 和美
撮影:シマワキ ユウ

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タロアウト(TAROUT)

キャラクターアーティスト

静岡県出身。2021年7月、仙台へ移住。大学進学を機に東京へ上京し、サラリーマンとデザイン会社勤務を経て、独立。2016年に環境省アンバサダーを就任し、2017年には藤田承紀さん(菜園料理家)とのフード&デザインユニット「ラニーズベジー」を結成。「未来の笑顔をシェアする」をコンセプトに、美味しく楽しい活動を開始。ストーリーテラーな世界観は、日本のみならず海外でも絶大な人気を誇る。

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