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こだまのどら焼(中編) 新たな時代に変えるべきこと、変わらないこと

取り巻く状況が激変する中で、何をどう変えていくべきかという課題を突き付けられた児玉社長。販売チャネルを広げ、コンセプトを一新した店舗を展開し、CIを見直した。手応えはあったが、思ったほどの成果は得られない。あらためて「こだまのどら焼」とは何かを消費者へ明確に伝える必要があると考えたその時、丸を2つ重ねたどら焼きのロゴマークが目に入った。原点回帰——。祖父が考案した70年間変わらないそのマークが、新たな時代の道しるべとなった。

新たな時代に変えるべきこと、変わらないこと

−いまはコンビニにも和菓子が置かれていますが、時代の変化をどう感じますか。

児玉 お客さまがお菓子を手に入れるチャネルがめちゃくちゃ広がりましたね。それによって、路面店は非常に客数が減ってしまっています。ちょっと古いデータなんですけど、2007年から2010年の間に7061件の専門店がつぶれた。そんな専門店の激減期に、僕たちがお客さまに何をどうやって伝えていくべきかというのが社長になって最初の課題でした。

そこでまず、販路をかなり広げたんですよね。卸を始めて、サービスエリアや空港、仙台駅のお土産処(どころ)にも置くようになりました。そして、コンセプトを見直したtekuteながまち店を2015年に立ち上げます。落ちゆく専門店の中で全体的にこだまのどら焼を買えるチャネルを見直すこと、見せ方を変えてお客さまにアピールすること、この2つを行いました。

その時は制服もなく、お店のスタッフはジャンパーを羽織って接客をしていましたが、tekuteながまち店ではお店としてどう見せたいのかを元木さんたちが考えて、「こういう制服で、こういうお店にしたいです」というのを出してくれました。ホームページの刷新を手掛けてくれたワンクルーさん(仙台のホームページ制作会社)にも協力してもらい、ワンクルーさんには子どもや女性をターゲットにしたミニサイズのどら焼き「こどら」の開発にも携わってもらいました。

児玉社長が新たな取り組みの一つとして2015年に販売を始めた「こどら」

−元木さんはどのようなコンセプトを立てられたんですか。

元木 長町にはかつて昔から営業していたお店があり、その世代のお客さまを取り込むのと同時に、若い世代の人たちを新たに取り込むことを考えました。長町かいわいはマンションが次々と建って、新しい世代の方たちが来るということが視野に入っていたので、そういう方に向けて全く新しい店作りをしようと。

児玉 あの時、「私たちと同じ世代の人が買いに来る店にしたい」と言っていましたね。それはチャネルの分散や専門店の激減、コンビニの台頭という中で打ち出すコンセプトとしてはとてもいいと思って、やってみなさいと話したのを覚えています。

その後、元木さんはエスパル店の出店も手掛けて、またお客さまにこうしたい、こういうお店にしたいというのを形にすることを、今度は自分たちだけでトライ&エラーしながら手探りでやっていきました。それはとてもいい経験になったと思います。

元木さんがコンセプトから携わったtekuteながまち店

−やってみた結果、感じたことは。

児玉 いろいろとやっているのに数字に表れていない。それはうまく伝わっていないからだと感じました。お話ししたように元木も僕も見て盗めという時代でやってきましたが、それではほかのメンバーに十分伝わっていなかったんですね。そこで働く人が「こういうお店なんです」ということが腹に落ちないと、お客さまには伝えられないんですよね。

そしてお客さまはお客さまで、こだまのどら焼というものに対してすでにイメージを持っていらっしゃったことにも気付かされました。お客さまの持っている「こだまのどら焼」と僕たちが打ち出したい「こだまのどら焼」のギャップがあったんです。

そこをそろえることが必要だと。いろいろチャレンジしても、結果としてうまくいかなかったという振り返りの中で、あらためて見せ方、伝え方を見直しました。

−「伝える」ということについてもう少しお聞かせ願えますか。

児玉 伝えるとは何なのか、何を伝えるのかということを考える中で、僕たちは「こと」の部分、ストーリーとコンセプトとベネフィット(客が商品から得られるメリット)の3つを明確にしようと思いました。

ウェブを中心にSNSやいろんな媒体を通して、お客さまが予習というか、ざっくりとこだまのどら焼について知っていただいた上でお店に来てもらうという形を作りたいと考えています。若い人たちがみんなウェブで1回は検索することを逆手に取って、じゃあ伝えたいことをウェブにしっかり用意しようと。

何を用意すればいいかというと、「過去」「現在」「未来」なんですよね。僕たちがこれまでやってきた役割、いま使命だと思ってやっていること、そして、これから共にやっていきたいことを可視化して発信することが必要だと感じています。

ホームページでも「こだまのどら焼」のストーリーを丁寧に伝えている

−見た目のデザイン的に重視していることは。

児玉 一つの鍵は「先祖返り」だと思っています。元号が変わり、マーケット的にも振り返りがあって、僕たちも平成までやってきたこだまのどら焼から新たな時代のこだまのどら焼への過渡期にあります。

そこで、あらためて「こだまって何屋なんですか?」と。業者さんなどに聞くと「こだまさんって言ったらどら焼き屋じゃないですか」と、当たり前の答えが返ってきます。でも、おやじの代で広がった時は、和菓子屋に向かっていました。それでいい時代もあったんですけど、多品種でやって、競合が増えて苦しくなって、そして残ったのはやっぱりどら焼きだった。だから僕たちはいま、「こだまはどら焼き専門店です」というのをデザインとしても強く打ち出しています。

初代が考案し、70年間変わらないロゴマーク

−このロゴマークはもともとあったんですか。

児玉 そうです。祖父が思い付いたみたいですね。2つ丸を描いてどら焼きと、単純ですけど、コーポレートカラーの黄色もその頃から変わりません。催事などに使う法被が結構古いデザインなんですが、これが一番分かりやすいことに気が付きました。先祖返りというのは、イコール分かりやすさでもあるんですよね。いろいろ新しいデザインを考えた結果、やっぱりこれだろうと。

うちは世代交代がけっこう進んで、スタッフがけっこう若いんです。平均年齢は20代後半から30歳を超えるぐらい。何十年も働いている人がいた時は新しい見せ方や冒険もしていたんですけど、スタッフが世代交代してくとともに、最初にあったものがやっぱり大事だと思うようになりました。

僕たちのベース、土台になっているものは何なのか。それがはっきりしないまま新しい見せ方をしていた時期があって、だからなかなか結果が出ませんでした。あらためてわれわれの会社とは何なのかというビジョンや伝えたいことをまとめてから、もう一回見せ方を考える時期に来ているのかなと思います。

取材・構成:菊地 正宏
撮影:松橋 隆樹

 

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株式会社こだま

本社 〒984-0001 宮城県仙台市若林区鶴代町6-77
TEL:022-235-5533 FAX022-238-9043

仙台市内を中心に直営店5店舗。仙台駅構内、仙台国際空港、サービスエリア、大型スーパーなど卸売りを展開。

【想い出販売業】として…「おばあちゃん家にいつもあった」「うちのお母さんとお店に買いに行った」「亡くなったおじいちゃんの好物だった」「お父さんの職場のお土産でもらった」
当店のお客様にお話しを伺うと、皆さま一様にご家族との楽しい思い出を語ってくださいます。
70年前から今日まで「こだまのどら焼」をお買い上げいただいたその先で、私たちの商品やサービスをきっかけに多くの【想い出】がつくられてきました。そしてこれからも「こだまのどら焼」を通じて、お客様と大切な方が明るく楽しい場をつくられることを願っております。
~大切な方に親しみを込めて贈るなつかし味~
こだまのどら焼はこの言葉を思い描いて、原材料にこだわり、作り手の技術はもちろんのこと、「またこのお店に来たい」と思っていただける店頭での接し方に至るまで、ひとつひとつの手仕事を大事にして参ります。

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