私と「故郷」
“ふるさとは遠きにありて思ふもの…” (作:室生屑星「小景異情 その二」より)
このフレーズは、誰もが聞き覚えのあるものだろう。
土地に根差し、愛着を持ち続けることはとても難しい。それには様々な要因があって、災害・人間関係・進学・転勤など一つの場所に居続けられるだけでも奇跡のように思う。人はいつだって流動的だ。
私は先祖代々の土地で生きている人たちが、時々うらやましくなる。私は宮城で生まれて北関東の栃木で育ったため故郷への土着はそれほど強くなく、土地とともに生きる覚悟や諦めと対峙しながらも最上の環境を築き上げようとする姿勢に感銘を受けることがしばしば。
だから私も大切な拠り所や関わりのある土地のために動こうとするが、踏み込めない領域がそこにはある。弊害といってしまえばそれまでだが故郷はそこに住まい、土地を育んできた人たちの生活と想いがある。
私は美術家として、そんな故郷に思いやりを忘れずにいたい。遠く離れていても心に寄り添い、伝え続けるのが私の仕事だ。
Writer & Painting=太田 和美
美術家・パフォーマー・ライター
仙台市出身在住、栃木県育ち。東京造形大学 造形学部デザイン学科 室内建築専攻卒。
大学在学中より、作家活動を始める。現在は、自身の造形作品「HOYAPAI」を被り、様々な愛の形を造形・舞踏・映像に組み込んだインスタレーションを展開する。「HOYAPAI」は女性性と豊穣の象徴である「乳房」と海の幸「ホヤ」からインスピレーションを得ている。現在も作品を通して、現代社会と共存するアートの在り方を追求し続けている。
【受賞歴】
2018年
SICF19(PLAY部門)/東京 審査員賞 栗栖 良依賞受賞
Salon des Beaux Arts 2018 /フランス パフォーマンス部門金賞受賞
2020年
MONSTER Exhibition 2020/東京 優秀賞受賞
(作品PV https://youtu.be/KnVC6UtqQzw)