ライターバトン -10- 「特別な広告」
仙台を中心に活躍するライターが、リレー形式でおくります。前任ライターのお題をしりとりで受け、テーマを決める…という以外はなんでもアリの、ゆるゆるコラムです。
特別な広告
●始まりは“モグリ”のコピーライター
いきなりの昔話からで恐縮です。いわゆるバブル期のいまから30年ほど前、私は仙台のとあるデザインプロダクションの面接で、コピーライターでもある社長から「好きなコピーライターは?」と聞かれ、その頃の広告をキラキラと飾っていた方々の名前を何人かあげました。
しかしその社長の好みではなかったのか、私の目をじっと見て「アキヤマショウは?」とひと言。「わかりません」と私。「コピーライターを目指しているのに知らないの?お前はモグリかっ」これがある意味、私のコピーライター人生の始まりでした。
●心のベストテン第1!2!3!位の広告
「アキヤマショウ」を探し求めて私はすぐに雑誌や年鑑を漁りまくり、そして驚愕します。
中学の時にテレビから流れてきたその短いフレーズに突然涙してしまったパイオニア「ランナウェイ」のCM、陸上競技会の会場で大塚製薬の方が「あいつは最後に気力で負けたとか言いますが乳酸が溜まっただけです、気力は関係ありませんから」に熱く猛反発(選手は気力も信じたいですからね)したカロリーメイトの広告のキャッチコピー、高校の時にテレビCMで人生二度目に涙してしまったサントリー「カクテルズバー」のキャッチコピー。
良い意味でも逆の意味でも多感な思春期の私の心に鮮明に残っていた3つの“特別”な広告、その全てがアキヤマショウ、もとい秋山 晶さんという同一人物によるものだったのです。あぁ、穴があったら(略)
●そういう人に私もなりたい
あちこちに掲載されているプロフィール写真をまじまじと見つめては私は思いました「このレイバンな怪しい恐そうなおじさんがあのカッコイイ広告を!?」と。暴言をお許しください、何しろ“モグリ”でしたから、、。
で、本題です。田舎のごく普通の中高生をも震えて泣かせ・奮起させたキャッチコピー。今回、秋山 晶さんがそれを書いていらした当時の年齢は50歳前後だったと改めて知りました。まさに現在の私自身のゾーンです。驚愕再びです。20歳そこそこの私が想像していた50歳の自分とのギャップにはクラクラしそうですが、その“特別”を前に猛省し、そうだ私だって泣かせてやるぞ(もちろん比喩です)!とビビりながらも気持ちは新たに。いつかはそういう怪しくてカッコイイ人になりたいですよね、なれるでしょうか、なろう!…ってなんでしょうこの取り返しのつかない展開のダメさは(笑)
●“特別”なものは勝手に影響を与え続ける
いまも現役で活躍されている秋山 晶さん。過去の様々な広告やキャッチコピーについての振り返り談などもいくつか読ませていただきましたが、その背景を知ると「え?」「知らなきゃ良かった!」のようなエピソードに遭遇することもあり、それはそれでまた楽しく。
そう考えるとクリエイティブな仕事って、作り手の想いを知ろうが知るまいが、目にした人に勝手に影響を与えてしまう不思議で面白いものですよね。私もそういう特別なもの、これからも乏しい知恵とセンスをうんうん悶えて絞って磨きながら、地味でもコツコツ届けていけたらと思っています。皆さんにとっての“特別”は何ですか?
次回
さてお次は、「ムードセンターまつむら」の松村 洋さんです。変わらない見た目、一向に増えないシワ、その秘密はお豆腐によるアンチエイジング効果というウワサも?書ける美肌小動物、ぜひそこのところを詳しく!と言いたいところですが、最近は“おなら”活動にも精力的な様子。あえておならの「お」でバトンを渡さない感じで(いえ、こちらの力不足なだけですが)どうぞお楽しみに。
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岡 美和
屋号は「メロウイエロー」。よく1980年代に発売された飲み物と間違えられますがmello yelloではなくmellow yellowのほうです。仙台→東京→仙台のデザインプロダクションを経てフリーランスのコピーライターとして独立、約20年になります。リズム感もないのにタブラボンゴなどもたしなんでいます。