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ライターバトン -25- 「いつだって、「しゃべり」を糧に」

仙台を中心に活躍するライターが、リレー形式でおくります。前任ライターのお題をしりとりで受け、テーマを決める…という以外はなんでもアリの、ゆるゆるコラムです。

いつだって、「しゃべり」を糧に


親からは「口から生まれたような子」と言われ、学校では通信簿に「授業中のおしゃべりでお友達の邪魔をしていた」と書かれるほど、私は子供の頃から「しゃべり」で人の気を引くが大好きでした。自分の発する言葉で笑ってもらえたり、「なるほど」と言ってもらえたりすることが至上の喜びだったんです。
ご記憶でしょうか、当時FM仙台の「飛び出せ!高校生諸君」。高校時代は放送部に在籍し、嬉々としてDJ気分を楽しんだものです。DJって死語?

そんな私が職業として選んだのは「営業」。それはまさにしゃべってナンボのザ・天職!
自分で言うのもなんですが、私のいわゆる営業トークは秀逸。どんなに「今日は買わない」という顔をしているお客様も1時間も話をすればお財布の口に手をかけ始めるし、どんなクレームも私が行けば鎮火します。※盛っています 笑
その瞬間の恍惚感たるや…。辛くとも、その瞬間のために売りまくる日々。

そうしていると、たまに売れない輩が言ってきます。
「売れ売れって、それじゃお客様に申し訳ないじゃないですか。あなた金の亡者ですか」
ほほう。
そう言われると、私は細い目をさらに細めてこう言います。
「アホか」
「誰が無駄なものを売りつけろと言った」
「営業は、お客様に必要なものを買っていただくのが商売なんだよ」
「私が売るのは、お客様が欲しい、やりたい、と言って下さったものだけなんだよ」
「お前はお客様に必要ないものしか売ってないから売れねえんだよ」
完全にパワハラですね。

でも、本当にそう。
「営業はモノを売るのではなく価値を売れ」などとよく言いますが、まさにそれ。どれだけ相手を理解して、自分の営業が相手にとって「100%役に立つ!」となるまで考え抜けるかがキモ。

そんな私が営業の場で一番大事にしていたのは、「相手が欲しい言葉を放つこと」。企画書とかはどうでもいい。私が言いたいことを伝えるのではなく、相手が言われたい言葉を伝えること。もちろん忖度ではなく、「私もそう思ってた」、「そこわかって欲しかった」となる、そんな言葉。それがわかるまで相手を知ったからこそ出た言葉で、眉間がパッと開き、お財布がパカッと開く瞬間。それがたまらなくて、営業人生23年、存分にしゃべり倒しました。

今、ありがたいことにライターとしてお仕事を頂くようになり、ふと思うことがあります。
「あれ、ライターってもしかしてやっていることは営業と同じ?
取材先の一番伝えたいことは?読者にとって嬉しいことは?それを見つけて、言葉に変えていく。
おお、これまでやってきたことと根本は同じではないか!また天職見つかった?
…いえ、大きな違いがありました。
今までべらべらと口を突いて出てきた言葉。それを文章で表すのは「しゃべり」の100倍難しい…!
23年かけて得た話術、一朝一夕にライティング力が身につくわけもなく、ひたすらに締切に焦るばかり。楽しいけど、楽しいんだけど。

それでも、しゃべることで話を引き出し「言いたかったことがまとまっている!」と喜ばれた時は売れた時と同じ恍惚感。いい仕事に巡り合えたなと感謝しながら、いつか文章が言葉よりも早く美しく出てくるよう、今は「しゃべり」の力を借りながら、苦行、いえ、修行する日々です。

それにしても、私が出会うライターさんは、みんなしゃべりも文章も面白すぎる人ばかり。
ライターが営業をやったら、世の中もっとご機嫌に経済が回るようになるんじゃなかろうか。

次回

次にバトンを渡すのは、WEBメディア「暮らす仙台」の記事でお世話になった笠松宏子さん。web制作会社に在籍しながら、フリーでライター&イラストレーター&カメラマンとしても活躍中のクリエイター。とっても可愛らしいふんわり系女子なのに、ひとたび取材に入ると目つきが変わり、ビシバシ仕切って圧倒的なセンスを見せつけてくれる二面性が魅力。オシャレなお話楽しみにしています!

田代智美

福島市生まれ仙台市育ち。印刷会社の営業、ブライダル情報誌の営業を経て、フリーランスに。時にライター、時に営業もフリーで請け負う、自称フリーランス社畜。8歳の娘のトリッキーな行動に日々翻弄されています。

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