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クリエイターインタビュー|佐藤 早紀さん(後編)

仙台在住のグラフィックデザイナー佐藤早紀(さとう さき)さん。フリーランスでの活動に加え、2015年に仙台の魅力を発信するために「ハイカラ.H」を設立し、ウェブマガジンやイベントの運営に携わってきました。2017年には「ハイカラ.H」を「株式会社オープンタウン」として法人化し、さらに活躍の場を広げる佐藤さんにお話を伺いました。

プライベートをどう仕事に活かしていますか。

まちに出て買い物したりすることが、私の発想源のような感じです。最近はちゃんと自分の時間を取ろうと思って、オープンタウンの定休日である木曜日には、絶対にパソコンに触らないようにしているんです。ヨガに行ったり、映画を観たり、マンガを読んだりして。そうでもしないと、基本的に仕事だけの毎日になっちゃうんですよね。私は影響を受けやすいタイプなので、自分から影響受けに行って、やりたいことをどんどん増やしています。

どんなところに買い物に行きますか。

服だと、最近は岩手の古着屋やセレクトショップに行っています。盛岡、花巻、水沢あたりですね。実家が栗原なので、岩手も近いんです。行ってみてちょっと意外だったんですけど、仙台より岩手のほうが服屋さんに人がいて、お店に入りやすいし出やすくていいんですよね。

宮城、岩手以外の地域に出かけることはありますか。

福島の飯坂の「おと酔い」っていう音楽フェスに携わったんですけど、すごくいいですよね。今の若い人ってなかなか古い温泉街に接点がないと思うんですけど、その若い人が温泉街を活性化させようとやっているのでおもしろいな、と。あと行くのは東京ですね。服屋さんの買い付けもありますし、今流行っているものを見に行ったり、イベントの参考になるものを感じに行っています。

仙台で好きなお店はありますか。

コンセプトの違う4店舗を、全て徒歩3分圏内ぐらいのところに揃えている古着屋さんがあるんです。若い子向けの古着を売る店舗と、大人になっても着られるものを置いているセレクトショップ系の店舗、っていう感じで分かれていて。どうしても年齢や趣味に合わせて通うお店は変わっていくので、年齢や趣味が変わっても系列店に通い続けられるのがいいですよね。さらに、4店舗でスタッフさんを回しているので、お店の人との関係が途切れないようにできているところもいいです。

仙台にこういう場所があったら……というものはありますか。

もっとクリエイターが集まりやすい場所があったらいいのかな。東京とかだと駅の近くにコワーキングスペースがあって、広くて人が多いのでふらっと入りやすいんですよ。仙台にもコワーキングスペースは最近増えてきていますけど、最初はよくてもだんだん身内だけになっちゃって、新しい人が入りづらくなっちゃうことがどうしてもあるんですよね。

コミュニティができてしまうと、それ以外の人たちが入りづらくなってしまうんですね。

どこもそうだし、多分、うちもそうなっていると思うので。それをどう壊せるかが難しいですね。オープンタウンも、知り合いとかがいなくても一人で来られるようなところにしたいです。

「場づくり」のむずかしさを語る佐藤さん

行政(インタビュアー:市役所職員)に求めることはありますか。

若い子の起業支援をやって欲しいなと思いますね。会社まではいかなくても、団体とかをつくっている子は結構いるんです。やりたいことを仕事にできる子が増えるようなサポートがもう少しあれば……と思います。会社って、株式じゃなければ6万円ぐらいで立ち上げられる。だから、要は行動するかしないかの話なんです。そういうことを知りさえすれば、お堅いビジネスに抵抗がある子でもやってみようと思ってくれそうです。

クリエイティブプロジェクト(※)も、もっと若い子に来てほしいです。仙台市が応援してくれるのは私たちもすごく助かったので、続けてもらいたいです。クリエイティブプロジェクトに限らないですけど、若い子ってなかなか助成金の存在に気づけないんですよね。そもそも役所のウェブサイト自体も見ないでしょうし。かといってあんまりポップなところにも載せられないのも分かります。バス停とか駅あたりがちょうどいいんですかね。その点、SC3のウェブサイトはかっこいいですよね。行政が関わっているように見えないし、若い子も見てくれそう。

 

※仙台におけるクリエイティブ産業の集積・活性化を目的とした、クリエイティブプロジェクト。佐藤さんの主宰するハイカラ.Hは、平成27年にプロジェクト採択者に。助成金を使用し、見る、作る、喋る、知る、考える共創の場所(現代のニーズにあった公民館)として、少しでも多く若い世代の人が表現する場所、コミュニケーションをとる場所、自由に共創する場所を既存の物の再生という形で作りたいという思いから、公民館を作るための準備・ハイカラの認知度アップを目的とした活動(イベント)を行いました。

そのほか、仙台に対して思うところはありますか。

仙台には夢とか熱意がある人が少ない気がするんです。やりたいことよりも生活のために仕事をしている人が多いんですよね。口では「こういうことをしたい」とは言っていても、仕事辞めてまではやりたくないとか。そういう人たちの中にも、私たちみたいに自由に仕事しているのを見て、「こういう風になりたい」って思ってくれる人がいたらいいなと思いますね。

クリエイターを目指す方に伝えたいことはありますか。

何だろう……。みんな、クリエイターになろうと思ってなるんですかね? 実は私自身はクリエイターではないと思っていて。「これをつくって」と言われてつくっているだけなんです。クリエイターというものが何を指すのかっていう話だと思うんですけど、私は、お金をもらわなくても何かをアウトプットしたいような、アートな気質のある人がクリエイターで、ただ依頼を受けて要望に寄せていくのはクリエイターじゃないと思うんですよね。そういう意味で、私はまだクリエイターになりきれていない気がします。

それで、伝えたいことですけど……。一回やったら後に引かないくらいの覚悟でやった方がいいと思います。「クリエイターってかっこいいな」という理由だけで目指してほしくはないですね。フリーの人って自由に見えるけど、全部一人で何とかするしかないので、会社で働いている人より自由じゃないですよ。私自身は誰にも相談しないでデザイナーになったんですけど、誰かに相談して決めちゃうと、誰かに助けてもらえるって思っちゃう。でも実際には、給料がないような時でも自分でどうにかしないといけない。誰かに助けてもらえると思っていると、そこでどうするのかっていう判断ができなくなっちゃうので「やりたいから自分でやる」くらいの勢いのある子がもうちょっといたらいいなって思いますね。

あとは、会社とか組織でダメ出しをしてくれる上司がいるのってすごくいい環境だなって、会社を抜けてから気づきました。フリーになった今では、クライアントからのクレームが勉強になっています。発注キャンセルにまでなった時、私、悔しさではなく嬉しさで泣いたこともありました。自分がいいと思ったものを出しても、クライアントから受け入れてもらえないと意味がないですし、成長できない。クリエイターを目指すのであれば、他の人の意見を大事にしながら、自信が持てるようになるまでコツコツ下積みをするしかないと思います。

取材日:平成29年5月9日
聞き手:SC3事務局(仙台市産業振興課)、岡沼 美樹恵
構成:岡沼 美樹恵

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佐藤 早紀

武蔵野美術大学中退、トッパンエディトリアルコミュニケーションズ株式会社入社後、ハイカラ.Hを設立し「東北を少しでも楽しい街へ」とWEBマガジン・イベント等を運営。2017年4月株式会社OPEN TOWN設立。グラフィックデザイナー。

仙台フォーラスや仙台パルコの広告をはじめ、美容室、飲食店等の名刺・ショップカード・ポスタ ー・ロゴ制作など幅広く活動。
Instagram @saki_design. https://www.instagram.com/saki_design/
Web. http://opentown.jp
http://highcolorh.com

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