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クリエイターインタビュー|後藤 充裕さん(後編)

東京の設計事務所で経験を積み、現在は仙台、東京を拠点に建築家として活躍中の後藤充裕(ごとう みつひろ)さん。仙台及び東京でのお仕事の内容や、仙台でこれからチャレンジしたいことについてお話を伺いました。

 

仙台にはもともと戻ってこようと思っていたんですか。

なんとなく戻ろうとは思ってましたが、ちょうど大学院にいたときに、TRUNKで地元の建築家やデザイナーに出会って、仙台にこういう人たちがいるんだったらいずれ戻ってきたいなっていう気持ちが強くなりました。

今はどんなお仕事をされているんでしょう。

これまでは住宅や飲食店、オフィスとかいろいろですけど、比較的小さな規模のプロジェクトに関わることが多かったです。最近では幼稚園やまちづくりなど少し大きなものもやらせてもらっています。仕事と並行して仙台にある実家も、もともと倉庫として使っていた1階をすべて改修して住宅にして、空いている2~4階を順次自分で改修しながら住んでいます。

K office(photo ©Yuriko Tsuchida)
I office(photo ©Yuriko Tsuchida)

仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

仕事のやり方としては、たくさん情報取り込んで、条件を最大限すくい取るように心がけています。だから僕の場合は空間の全体像は終盤になるまでなかなかできません。条件が整った段階で一気につくるというパターンが多いです。途中でイメージをつくってしまうと、それを前提として意見が出始めてしまうので、途中経過をマイナーチェンジしていくというやりとりは意識的にやらないようにしています。

お客さんの希望やカラーはもちろんあると思いますが、後藤さんはご自身のカラーを意識したりしていますか。

そういう意味でのカラーっていうのは、意識しなくても出てしまうデザインの嗜好のことだと思っていて。カラーを出そうと思って出すのは、どうしても説明がつかないのでやりません。あくまでクライアントの要望に対して、設計者としてこう考えるっていう手続きを踏んでいます。その中で、どうしても説明がつかない、好みで選択する領域があって、そういうところにカラーが出てくるんじゃないかなと思います。

ある展覧会のための什器

仙台にあったらいいな、と思う場所はありますか。

外から誰かきたときに、「仙台ならここ」っていう場所があまりにも少ない気がしていて、外から来た人も地元の人も毎日行けるような包容力のある場所があるといいなと思います。例えば、市民広場だと毎週のようにイベントがあって、人も結構来て賑わっていると思うんですけど、イベントがあるときだけじゃなくて、何もないときにこそ行ける目的ができるような、日常的なプログラムがあるともっといい場所になると思います。

こんな人がいたらいいな、と思う人はいますか。

仙台に限らず地方都市共通だと思うんですけど、優秀なデザイナーやものづくりの人がいても、そういう想像力を束ねる人がなかなかいないなっていうのがあって。ある規模以上になると、プロデューサーやディレクター、デザイナーなど、というふうに明確に分業になっていますが、ほとんどの場合は1人で全部やらなきゃいけないことが多くて徐々にプロジェクトが閉鎖気味になっていってしまう。プロジェクトごとに、適材適所にある専門性をもった人を招集して、束ねる人がいることで、仙台で活動してるクリエイターにプラスに働くんじゃないかな、と感じています。これは行政にも言えることかもしれないですけど。

これからチャレンジしてみたいことはありますか。

まちの中で2〜3軒を一気に建て替えるような集合体をつくってみたいですね。僕ら設計者ってクライアントワークなので、一つの建物に関わることがほとんどで、集合体や塊を扱うことがなかなかないんです。「建築に関わっていると、小さくても1つの文化みたいなものをつくれる」ということをよく言っているんですが、集合する空間というのは、否応がなくその場の環境みたいなものをつくることだと思います。そうした環境づくりに関われることは、ものづくりをやっている人にとっては幸せなことだし、それを通じて1つのスタイルみたいなものをつくれるのは魅力的だなって。

最後に、クリエイティブ分野で働きたい人や勉強中の方にアドバイスとメッセージをお願いします。

是非、小さくてもいいので文化みたいなものを自分でつくれるようになってほしいというか、すごく楽しいことなのでそれを目指してやってほしいと思います。地方都市が抱える課題はいろいろな領域についてを横断的に考えないと解決できないことが多いと感じています。そこでは、自分の専門性からみる他分野、他分野からみた自分の専門性、どちらの眼差しも必要です。それは、いろんな領域を薄く理解するんじゃなくて、より自分のスタンスや専門性を磨いていくことで見えてくるものだと思います。それぞれの専門性を研ぎ澄ますことに一生懸命になれる、そういう仲間を仙台で増やしていきたいですね。

取材日:平成30年4月5日
聞き手:仙台市地域産業支援課
構成:工藤 拓也

 

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後藤 充裕

1986年仙台市生まれ

2012年 宮城大学大学院修了

2012-2016年 建築設計事務所勤務

2016年-仙台、東京を拠点に設計活動

主な受賞に2010年度日本建築学会設計競技 最優秀賞、シェルターインターナショナル学生設計競技2010 優秀賞、第18回 空間デザインコンペ 入選、SMOKER’S STYLE COMPETITION 2016 優秀賞 など

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