ライターバトン -23- 「デフラグしたい」
仙台を中心に活躍するライターが、リレー形式でおくります。前任ライターのお題をしりとりで受け、テーマを決める…という以外はなんでもアリの、ゆるゆるコラムです。
デフラグしたい
栄えある令和元年一発目、よろしくお願いいたします!
さて。パソコンをしばらく使っていると
起動が遅くなったり、動作がもっさりしてきますよね。
そういう問題を解消してくれるのが「デフラグ」。
データの格納場所があっちゃこっちゃになっているのを
整理整頓することで、アクセス速度をUPさせるらしい。
以前使っていたパソコンは
このデフラグの過程が可視化されていました。
(ちなみに今のは、知らないうちにやって勝手に終わってる)
赤、青、緑、黄……とカラフルな断片が
赤は赤の場所へ、緑は緑の場所へ、と少しずつ動いて
最終的にはぐちゃぐちゃのモザイクが
きっかりした「色のボーダー」になるのです。
ああ。私の頭のデータも、こんな風に整理整頓できないものか。
固有名詞がなかなか出てこず、会話がアレソレばかりになったり
「あれ、今何しようとしていたんだっけ」と立ち止まってばかりなのも
ストレージの断片化が相当に進んでいるせいなのです。
とりあえずデフラグにあたり
余計なメモリは、全消去したいと思います。
* * *
「かっこせ、まる、き、し、しか、まる」
突然すいません。
これ、なんだかわかりますか?
自分の記憶なのに自分でもよくわからなかったんで、今調べたら
「古典文法 助動詞『き』の活用」だそうです。
そう。高校の古文の先生は、とにかく機械的に「活用」を覚えさせる人だった。
かっこけら、まる、けり、ける、けれ、まる
から、かり、まる、かる、まる、かれ
て、て、つ、つる、つれ、てよ
……はは、すごく無意味(先生ごめん)。
漢詩とか枕草子とかを諳んじるのとは事情が違います。
そもそもこれがなんなのか、検索するまで正体不明だったわけですし。
こういう無駄に食ってるメモリはもう、一発消去です。
あと、私の特技に
「なつかしアニメのエンディング曲をソラで歌える」
ってのがあるんですが
これもなかなかに不要なメモリです。
「カラオケで盛り上がるんじゃない?」
って言う方もいるかも知れませんが、いやいや。
盛り上がるのはあくまでオープニング曲。
エンディングは歌っても誰も知らないから、盛り上がりようもないんだな。
この辺もさっぱり消去しましょう。
そうそう。
失敗にまつわる忌まわしい記憶も、ばっさり消去したいところです。
例えば……。
新卒で入った会社の出勤初日に寝坊して
上司に電話で起こされたこととか。
青葉山トンネルの真ん中で車をガス欠させて
たったひとりで大渋滞を引き起こしたこととか。
取材先へ向かう途中道を間違え、焦った矢先に「転回禁止」で切符を切られ
さらに焦ってアクセルを踏み込んだ瞬間ネズミ取りにひっかかり
50km/hオーバーで一発免停食らったこととか。
ちょっと笑って話せないような、アレとかコレとかソレとかも
まとめてデリートしちゃいましょう。
* * *
……なーんてできないところが、人間の悲しさなのですね。
ひとつ年を重ねるごとに、いびつな記憶が増えていき
その分、新しい知識が頭に入りづらくなっていく。
パソコンなら最悪、新しい機種に買い換えりゃ済むけど
こちとらポンコツになろうがアナクロになろうが
だましだまし使い続けなければならないのです。はあ。
「ままならなさこそが人間らしさであり、愛おしい部分」
そう割り切るには、まだまだ人生道半ばなわけで。
そうだなあ。令和20年を迎える頃には
こんなデコボコをチャームと言い張るような
ハッピーなババアになれたらいいのだけれど。うーん。
そこへ至るまでのハードルは、なかなかに高そうです。
次回
次はブライダル誌編集部時代の同僚で、現在はフリーの編集者・ライターとして活躍中の小松七恵さんへバトンをつなぎます。界隈ではちょいと知られたヅカヲタ……もとい、宝塚メイニアの彼女。「い」から始まるタイトルで、あのステージのようにきらびやかなコラムを書いてくれるはずです。
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吉田美奈子
仙台生まれの仙台育ち。タウン誌、ブライダル誌の編集部勤務を経てフリーに。現在「絶対ありえない」と思っていた某バンドの再結成に驚愕&興奮中。 夏のツアーチケットGETに闘志を燃やしています。