THINK! MAKE! SHARE! -3- まずはアイデアをかたちに
朝日クラフトの廃材「ターポリン」を再利用し、新たな商品開発を行うプロジェクト。FabLab SENDAI - FLATのデジタル工作機を活用した試作から商品開発までの工程を紹介していきます。
大網 これまで、さまざまな加工実験や朝日クラフトさんへの訪問を通して、「ターポリン」がいったいどんな素材なのかということを学んできました。
小野寺 ここからは、実際にどんな商品をつくりたいかを考えていきます。まずは、これまでの活動の中で書き留めていたメモを見直すところから。
大網 どんなものをつくりたいかというプロダクトのイメージだけではなく、加工方法についてもいくつか案が出てきました。
小野寺 ターポリンは屋外で使われることが多いことから、その耐久性を活かした袋物に関する案が多い印象ですね。
大網 ただ、これらはまだ単なる思いつきなので、1度立ち止まって商品開発を行う上での枠組みを決めることに。
小野寺 はじめに考えたのが「商品そのもののあり方」です。思いついたまま好き勝手に物をつくってもまとまらないので、このようなルールを設定しました。
(1) 素材は(なるべく)無駄なく使用する。 (2) プロダクトをつくるために、(なるべく)新たに材料を購入しない。 (3) ユーザーが手を加えられる余地を残す。 |
小野寺 そもそも今回は、廃材として処分されるはずだったターポリンの利活用が目的なので、それをクリアするために新たに多くの材料を追加したり、素材自体を無駄にするというのは避けたいところ。また、せっかく「誰でもものづくりのできる図工室」を運営している私たちが開発を行うので、その商品を手にした人が自分なりのアレンジを加えられたり、ワークショップ用のキットとしても使用できるようなものにしたいと考えました。
大網 続いて、「ターポリンの長所」をテーマに思い浮かんだ項目をリストアップし、それぞれについてキーワードを書き並べる作業を実施。
小野寺 「ターポリンの長所」だと思うポイントを細かく分解し、それぞれを組み合わせることで新しいアイデアにつなげるのが狙いです。実際に出てきた言葉を俯瞰して見てみると、組み合わせたら面白そうなものもいくつかありました。今すぐに使うことはできなくても、後々行き詰まったときに見返すことができるように、これはこれで温めておくことに。
大網 そしてこれまで出てきた案をベースに、以下の2種類のプロダクトを試作しました。
1.折りたたむことで完成する◯◯ケース
小野寺 まず1つ目はこんなプロダクト。その名のとおり、縫製や溶着をしなくても、折りたたむだけでかたちになるケースです。
大網 袋になる部分と紐のどちらにもターポリンを使用。朝日クラフトさんで、紐代わりにターポリンの端材を細く切ったものを使われていたところからヒントを得ました。
小野寺 耳をパタパタと折りたたむことで封筒のような袋状になり、紐を巻きつけると蓋を閉じることができます。ただ、すべての耳が1本の紐だけで抑えられているため強度面で不安があり、見た目にも薄っぺらくて頼りない印象なのがネック。それに加えて、アイロンなどで折り目をしっかりつけておかないと自然に開いてしまうのもスマートではありません。
大網 次に製作したものはこのような形状のもの。はじめに製作したものは、蓋を閉じるために紐を使用していましたが、こちらは1枚のターポリンのみでできています。
小野寺 展開してみるとこのような形になっているので、平たいシートの状態で保管することや、くるくると丸めて持ち歩くことも可能です。使用時には切り込みに左右の耳を差し込むことで、袋のかたちがしっかりと保たれるようになっています。あらかじめ折り目を付けておく必要がないというのはポイントが高いですが、蓋をホールドするための仕組みは検討の余地がありそうですね。
2.細く切ったターポリンを組み合わせたシート
大網 こちらは、プロダクトというよりも素材そのもので遊ぶところからスタート。
小野寺 まずはターポリンを1cm幅の細い短冊状にひたすらカットしていきます。
大網 それを縦横交互に織り込み、アイロンで軽くプレスすると…
小野寺 こんなド派手なシートができあがりました。なんだか道の駅や東南アジアのおみやげ屋さんで売っていそうな風合いです。ターポリンは、表面が平滑なものだけではなくメッシュ状のものもあるので、テクスチャの用い方でもさまざまな表情を生み出すことができるのが面白いところですね。
小野寺 シートを3つ折にし、両サイドをつなぎ合わせて袋状にしたものもつくってみました。
小野寺 この袋では、ターポリンどうしを織り合わせることで袋の両端を留めてみたのですが、さすがに溶着した場合と比べると心もとない仕上がりとなっています。
大網 素材自体は非常にやわらかいため、折りたたむことが容易というのはいいヒントになりそうです。
小野寺 また、このシートは素材としてはとても面白いのですが、ターポリンを細い紐状にカットすることと、織ること自体にとても手間がかかってしまうということが課題かなと。
大網 なので、カット専用のマシンと、ターポリンを織るためのゴム通しのような道具の開発も視野に入れてプロジェクトを進めていきたいと思います。
小野寺 素材を知るための実験と、商品の開発を念頭に置いた試作とでは、素材自体との向き合い方がまた違ってきますね。
大網 次回は再び朝日クラフトさんへおじゃまし、今回製作したプロダクトを実際にご覧いただきながらアイディアを深めていきます。
FabLab SENDAI ‒ FLAT
FabLab SENDAI ‒ FLAT は、個人や小規模チームによるものづくりの実験の場であり、実践の場です。レーザーカッターや3D プリンターなどデジタルデータを利用する加工機械を使い、スピーディーかつ低コストなトライ&エラーを通して、自分のアイデアを形にしていくことが可能です。
また、集まった人同士で情報交換や協力をし合ったり、日本や世界に広がるFabLab ネットワークを通じた世界中の人たちとの交流の中からアイデアが立ち上がるような、新しい形の工房です。
FabLab SENDAI ‒ FLAT で機材を利用するためには、機材ごとに初回講習を受講していただく 必要があります。初回講習や見学会などは、下記よりスケジュールをご確認ください。 http://fablabsendai-flat.com/facilities/