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クリエイターインタビュー前編|ほんだあい+伊東卓(喫茶frame)

ギャラリー青城の版画を味わう喫茶店 お客さまとの出会いや対話も大切に

2021年5月に現代版画の画廊・ギャラリー青城の後継として「喫茶frame」がオープンしました。喫茶frameを運営する作家のほんだあいさんと写真家の伊東卓さんに、おふたりそれぞれの制作活動や、お店をオープンしたきっかけなどをお聞きしました。

― おふたりのご出身や、普段の制作活動についてご紹介お願いします。

ほんだ 私は仙台市出身で、これまでずっと仙台を拠点に活動してきました。イラストレーションやゆるやかなタッチの絵を描いています。

ほんだ でも、喫茶frameでは「ギャラリー青城」時代の版画を楽しんでもらいたいので自分の絵を大きく打ち出すことはしていません。自身の作品展示は隣接するギャラリー「SARP」など、他の場所で今後も行っていけたら。

ほんだ また、みやぎ在来作物研究会という団体のメンバーとして、宮城県の在来作物を広めていく活動を行っています。生産者がたった1人の作物もあるんですよ。活動のひとつとして、これまで在来作物を守ってきた方のお話を紹介するリーフレット『みやぎ在来作物だより』も制作しています。

伊東 僕も仙台市出身で、ほんださんと同じく仙台を拠点に活動を続けてきました。ここ数年は「光の穴」をテーマに防空壕や炭鉱跡などの内側から外の光を撮影しています。

伊東 かつて目的を持ってつくられた場所が本来の役目を終えてもなお残らざるを得ないこと、当時そこにいた人たちがこの穴から見ていた景色や光に想いを馳せる意味でも、内側から撮影をしているんです。ちなみに、数年前は別のテーマで撮影を続けていました。内装リフォームの仕事をしていたことを活かし、リフォーム前の部屋に残っている、以前に誰かが暮らしていた痕跡(壁のシミなど)をたびたび撮影したものです。

― それぞれ、たいへん面白い取り組みですね!さて、喫茶frameは2021年5月にオープンされたとのことですが、構想のきっかけやオープンに至るまでの経緯を教えてください。

ほんだ 45年続いたギャラリー青城が閉廊すると決まってから、ギャラリー青城跡地の今後について、すぐ隣のギャラリー「SARP」の運営委員会で協議したんです。ギャラリー青城は岩手県出身の美術家・村上善男さんの作品を中心に現代版画を扱っていた画廊で、2020年12月に閉廊しました。私はSARPで会計と運営事務を担当していたため、この協議に参加していました。SARPは、もともとはギャラリー青城の維持存続と活性化を目的に生まれた、作家主体で運営する形態のギャラリーです。そのため、ギャラリー青城が育んできたものや歴史をふまえ、跡地をどうしていくかSARPの運営委員会で話し合う必要がありました。

現在、喫茶frameの奥は隣のSARPと繋がっています。扉を開放してスペース同士をつなげるのも可能とのこと。

ほんだ そこで、「ギャラリー青城の版画を楽しみながら過ごせる喫茶店に改装して運営したらいいのでは」と思い立ち、企画書を作ったのが喫茶frameの構想のはじまりでした。運営を担ってくれる方を探していたんですが、なかなか見つからなくて最終的には自分がやると決めました。以前、仙台にあった美術カフェ「ピクニカ.」の運営に携わっていた経験から、飲食を含むスペース運営の大変さもよく理解していたのもあって、自分が手を挙げるかどうかしばらく悩んだんです。でも、卓さんにも協力をお願いして一緒にやっていこうと踏み出すことができました。それがオープンまで残り1年を切った2020年秋頃のことです。

― 飲食店や場所運営の難しさを知っている上にオープンまで時間も無い中で、英断だったかと思います。

ほんだ 美術を盛り上げていく上でカフェという要素は必要ですし、お茶をしながら作品を見られる場所があったらいいなと以前から思っていたので。やると決めてからは、バタバタとオープン準備を始めた感じでしたね。ギャラリーをカフェにするための手続きは煩雑で、消防署や保健所とのやりとりも大変でした。コーヒーなどの飲み物や必要な機材を手配するのも、壁に展示する作品を決めるのも、オープン前ギリギリまで検討しました。

伊東 オープン前日、僕は現地にいられなかったのでメールのやりとりで展示する作品についてあれこれ検討して、決めましたよね(笑)。2021年5月にはSARP側で企画展も予定していたため、間に合ってよかったという気持ちです。

ほんだ 本当に、間に合ってよかった(笑)。壁に展示している版画はもちろん、お声がけいただければ引き出しの中にストックしてある作品もご覧いただけるようにしています。

伊東 これなんかは僕もお気に入りなんです。かっこいいですよね。

戸村春樹/虹

取材日:令和4年1月11日

取材・構成:昆野 沙耶(恐山 らむね)
撮影:窪田 隼人

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ほんだあい(右)

1977年、宮城県仙台市出身・在住。1997年、東北工科情報専門学校 デザイン科卒業。

<展覧会>

1998年、「ウルトラワールド」ギャラリー週刊アート/仙台市(個展)
2010年、「ドローイングワールド」丸福珈琲店・Gallery誉/仙台市(個展)
2010年、「夏休みの思い出」美術カフェpicnica. /仙台市(個展)
2019年、「short short piece- 仙台アーティストランプレイス小品展-」SARP/仙台市
2019年、 奇数アトリエ11月 AER/仙台市、
2020年、mado-beya企画 第2回目「はるなつあきふゆコレクション」展mado-beya/石巻市

他グループ展に参加

伊東卓(左)

1971 年 宮城県仙台市生まれ。バッハと麻婆豆腐を愛する。

<展覧会>

1998 年 個展「日没の温度計」エルパーク仙台展示ギャラリー
2001 年 個展「あたたかい岸」artspace 宙
2002 年 個展「town」artspace 宙
2003 年 個展「新 town」re:bridge edit
2006 年 個展「遠い一群」artspace 宙
2009 年 個展「たいら」ギャラリー青城
2011 年 二人展「311 以降」gallery COEXIST
   個展「ROOMS」SARP 仙台アーティストランプレイス
2012 年 企画展「東北より」ニコンサロン bis 大阪
   個展「ROOMSII」SARP 仙台アーティストランプレイス
2013 年 個展「ROOMSIII」SARP 仙台アーティストランプレイス
2014 年 個展「漂う昼 ROOMSIV」birdo space
2015 年 個展「空白 ROOMSV」birdo space
2018 年 個展「Rooms 片蔭」SARP 仙台アーティストランプレイス
2020 年 個展「光の穴」SARP 仙台アーティストランプレイス

<受賞歴>

2020 年 宮城県芸術選奨新人賞受賞

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