ライターバトン -20- 「魅力は理不尽さとともに」
仙台を中心に活躍するライターが、リレー形式でおくります。前任ライターのお題をしりとりで受け、テーマを決める…という以外はなんでもアリの、ゆるゆるコラムです。
魅力は理不尽さとともに
突然だが、「Mリーグ」をご存知だろうか?
Mとは「麻雀」のMで、麻雀のトッププロたちによるチーム対抗形式のリーグ戦「Mリーグ」が2018年7月に発足し、界隈は今激アツなことになっているのである。
おそらく、いまだ麻雀と聞けば、多くの人が紫煙がくゆる空間の中で、ギャンブルに興じているイメージを想像するのではないだろうか。この決して健康的とはいえないイメージを覆し、本来の知的ゲームとして普及を図るという目的で立ちあがったのが「Mリーグ」。しかも、「eスポーツ」と同様に知的ゲームスポーツとして、オリンピックの正式競技採択を目指すという遠大な目標を掲げているのだ。
自身トッププロに匹敵する麻雀強者として知られるサイバーエージェント社の藤田社長が仕掛け人となり、最高顧問には初代Jリーグチェアマンの川淵三郎氏が就任。チームのオーナー企業には、テレビ朝日や、電通、博報堂などの有名企業が並び、発足にあたっては、チームの選手を指名するプロ野球さながらのドラフト会議も行われた。オリンピックの種目化はともかくとしても、まさに麻雀界が一変するほどの取り組みがガチのガチで始まったばかりで、願望を込めて言えば、世の中に一大ムーブメントが巻き起こるところなのである。
麻雀界全体がそんなかつてない盛り上がりを見せる中、麻雀を大学入学後すぐに覚えて20年以上にわたって嗜んできた私も、自分史的に第7次くらいの麻雀ブームにどっぷりと浸かっている最中だ。
ところで、そんな麻雀の最大の魅力は理不尽さに満ちたゲームだということ。将棋や囲碁と違って、実力のある者が必ず勝てるわけではなく、初心者がトッププロに勝つことだって、割と簡単に起こりうるのだ。確率が重視される知的ゲームであるのに、運、ツキという目に見えないものが介在する割合が非常に大きく、だからこそ、実力差がある同士でも、一緒に夢中になって遊べる数少ないゲームなのである。
そして、この極めて理不尽にできているゲームは、理不尽ゆえに仕事や人生にとって学びになるところも非常に大きい。先述したサイバーエージェントの藤田社長も『仕事が麻雀で麻雀が仕事』という著書で、いかに麻雀がビジネスとも共通するかを書かれているのだが、私はコピーライターという仕事もまた麻雀と共通点が多いのではないかと感じている。例えば、いかに実績のあるコピーライターでも必ず毎回傑作を生み出せるわけではないし、ある一回に限れば、素人がプロよりも優れたコピーをつくれることだって、まあまあの頻度でありうる。しかし、それでも、プロがプロたる所以は、常にある一定以上の水準を超えることであり、コンスタントに打率を残せることなのではないだろうか。
理不尽なことだらけでも、結局勝率を高めるには自らの技術向上に努めなければいけないことや、どんなに苦しい時でも、与えられた条件の中で、その時のベストを尽くすことが大事だということ。プロのコピーライターとして持ち続けなければいけない心構えを、麻雀はいつも私に教えてくれるのである。
実は、すでに原稿を書き上げていたのだが、締切当日になって、せっかく自由に書ける機会なので、麻雀の魅力を伝えねばならない(少しでも伝わったでしょうか?)という正体不明の使命感みたいなものがフツフツと湧き上がり、急遽原稿を差し替え。この原稿を書き上げてホッとしたところで、雀荘へと足を向かわせる私なのであった。
次回
次回は創童舎のコピーライター・小杉一高さん。小杉パイセンとはまだアーリーの頃のtwitter上で知り合い、ずっとちょこちょこ絡んでいたものの、実際にリアルで対面したのは、6、7年は経た、ある広告クリエイターたちが集まった企画の説明会でという不思議なご縁。「に」から始まるテーマで、食や音楽に造詣の深いツイート以上に面白い記事を期待しています(笑)。
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髙橋徹
白石市出身。求人広告代理店、広告制作会社、編プロ、Web制作会社等の勤務経験を経て、現在は仙台にてフリーのコピーライターとして活動。求人広告や採用パンフレット・Webサイトなど、人材採用関連の仕事を得意とする。
麻雀は割と強い方で、日本プロ麻雀連盟主催のタイトル戦本戦に、2度一般予選を優勝して出場した経験あり。当面目指しているのは特に需要はない「日本一麻雀が強いコピーライター」。