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クリエイターインタビュー後編|野原 巳香(ライター・編集者)

趣味と仕事の垣根を越え、より良い創作に繋げたい。

ライター・編集者として、仙台を拠点に活動をする野原巳香さん。最近では自らの趣味を生かした仕事に携わるなど、活躍の幅をどんどん広げている。常に感性を養い、いつまでも探求心を忘れない。この仕事における「楽しさ」について、お話を伺った。

 

―この仕事を続けるうえで、自分なりに大切にしていることはありますか?

原稿を書くことは未だに時間が掛かりますが、期日を指定されたら必ずその前日には原稿を書き上げ、推敲する時間を長く取るようにしています。書き終わった後に「この表現のほうがいいな」と思い付くこともありますし、ブラッシュアップさせる時間も大切。若い頃は徹夜をすることも日常茶飯事で、そこでがむしゃらに頑張ったからこそ得られた力はもちろんあります。ただ、年を重ねるにつれて、いつも期限ギリギリの作業では良いものが生み出せないということに気付きました。またクリエイターには知識や感性を養うことも必要。インプットの時間を増やし、より良いアウトプットに繋げることが大切だと感じています。

―自分の感性を磨くことも、この仕事には重要なんですね。

そうですね。私も最近は休みをなるべく作って、旅行や趣味に時間を割くようにしています。そうして好きなことを突き詰めていると、仕事に繋がることもあるんです。そのひとつが、器に関するお仕事。仙台にある食器総合商社「瀬戸屋」が立ち上げた新ブランド「彩地器 Saijiki Tohokuの取材やライティングを担当しています。これは器の販売だけが目的ではなく、東北の工芸品や食文化を未来に残そうというプロジェクト。開発やプロモーションの段階から関わらせていただいているのですが、私は元々“器”が好きで、趣味で全国の窯元やギャラリーを巡っていたんです。だからこの話をいただいたときは本当にうれしかったですね。

「彩地器 Saijiki Tohoku」のパンフレットとチラシ。こだわりのある分野だけに、デザイン・内容ともに非常に凝った仕上がりとなっている。

―それこそライター冥利に尽きるのではないでしょうか。

周りに「これが好きだ」と話したことがきっかけで、その分野の仕事が舞い込んでくることもよくあるんです。それがライター業の面白さでもありますね。自分の好きなことが仕事になると、それに対する知識も情熱もあるので、結果的にクライアントの方も喜んでくださる。お役に立てることも増えるので、仕事のやりがいも大きいです。また、世嬉の一さんのお仕事(前編参照)もそうですが、食にまつわる分野にも大変興味があって、声を掛けていただくことが多いです。私自身も食の知識を深めたいと思い、食関連の資格も取得しています。「いつか仕事に繋がればいいな」という期待を抱きながら、最終的に趣味と仕事の垣根がなくなることが理想ですね。

―探求心を持つことも大事、ということですね。

それを持ち続けてないと、良い仕事はできないんじゃないかと思います。文章を書く仕事だからといって、文章の読み書きだけを勉強すればいいかと言えば、決してそうとは限りません。いろいろな場所に行ったり、いろいろな人と出会ったりすることで、たくさんの知識を身に付ける。それが取材のときに役立つかもしれないし、数年後には仕事に繋がるかもしれない。ちなみに、私が器や食に興味を持ち始めたのも、取材が入り口なんです。ライターはあらゆる分野の取材に行くので、自分の趣味や好きなことにも巡り合いやすい。とても恵まれた環境にあると思います。

―仙台で働く魅力はどんなところでしょうか?

仙台には文化的資源や特産物が豊富で、それらを生かした商品開発やまちおこし、産学官連携や老舗のリブランディングなど、地域の未来につながる広告や制作物も少なくありません。ライターや編集の仕事といえば、雑誌や書籍を想起する方が多いと思いますが、実際はもっと幅広いです。地域の活性化や文化の発展に貢献できる可能性もあります。

―これまでいろいろな文化を学ばれたからこそ、気付くことも多いのではないでしょうか?

どうしても東京のほうが刺激に満ちているイメージはありますが、地方は地方ならではの面白さがあると思います。だからこそ、東京のものまねをするのではなく、仙台らしさが輝く街になってほしいです。たとえば、工芸であったり、歴史や食文化であったり、仙台ならではの魅力はたくさんあります。それらをうまく発信できる街になれるよう、地域の魅力の掘り起こしや発展に、クリエイターとして少しでもお役に立てれば幸せです。

―最後に、同じくライター・編集者を志す人に向けて、メッセージをお願いします。

どの職業にも当てはまりますが、特にライター、編集者は、あらゆる経験が自分の仕事に繋がることが多いです。今はインターネットで簡単に情報が拾える時代ですが、ぜひ自分の手と足を動かし「五感」で経験してほしいです。また私もそうでしたが、若いときは基礎を疎かにしてしまいがち。スタンダードやベーシックを理解すると、アレンジの幅も広がりますし、新しい視点の発見にも繋がるので、ものづくりがより面白くなりますよ。仙台でのクリエイティブの可能性や楽しさが広がるよう、お互いに頑張りましょう!

取材日:令和元年10月17日
撮影協力:book cafe 火星の庭
取材・構成:郷内 和軌
撮影:はま田 あつ美

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野原巳香

仙台市出身。宮城県第二女子高等学校(現・宮城県仙台二華高等学校)を卒業後、早稲田大学第二文学部に進学。大学在学時に出版社・編集プロダクションでアルバイトを始め、卒業後、仙台市の出版社に就職。地域情報誌の制作などに携わり、2005年に独立。現在は食や文化・芸術、教育分野などを中心に、幅広いジャンルの執筆・編集を担当している。

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