クリエイターインタビュー後編|郷内 和軌(ライター)
自分の書いた文章を読んで喜んでくれる人がいる以上、残念なものは世に出したくないです。
幼い頃からスポーツに魅了され、その感動や選手の想いを文章で伝えるべくライターになることを決意した郷内和軌さん。スポーツの奥深さを伝え続ける彼は岩手と宮城の2拠点で活躍しており、日々研鑽を積んでいる。今回は2拠点で活動する理由や、仕事に懸ける想いを伺った。
-大学で経験した取材や編集と、会社に入ってから経験するもので違いはありましたか?
やっぱり責任の重さが違うと思いました。今でも忘れられない出来事があって、入社して間もない頃、取材したスポーツ選手の名前を間違えて掲載してしまったんです。誤植があることを上司から聞かされたのですが、そのときは頭が真っ白になりましたね。紙媒体なので一度印刷してしまうと、もう取り戻せないことがほとんど。あのときは「やっちまったな」とかなり落ち込みましたし、甘い世界ではないことを思い知らされました。文章のクオリティー含め、取材に協力してもらう人や雑誌を購入してもらう人がいる以上は、その方たちが残念に思うものを作ってはいけないという責任をいつも感じながら書いています。
-働くことで意識が変わっていったということですね。
はい。あと、学生の頃は自主的に記事を書いても読者の反響がわからなかったのですが、会社に勤めてから取材した高校生が「雑誌に載ったよ」とツイートしてくれたり、保護者の方が喜んで購入してくれたりと、自分が書くことによって喜んでくれる人がいることがうれしいです。誤植の一件もきっかけとなって、読者目線でものを考えられるようになったと思います。
-フリーランスになってから岩手と宮城の2拠点で活動されていますが、その理由を教えてください。
宮城の『Standard』には盛岡に住んでいたときも編集として携わっていたのですが、当時から打ち合わせなどで仙台に通うことがあったんです。でも距離が遠かったので、取材や撮影に立ち会うことはできなくて、それがちょっと物足りなく感じたんですよね。編集という立場ではあるけど、やっぱり現場で仕事をして、宮城、仙台という街ももっと知りたいと思うようになりました。あと、仙台や盛岡などそれぞれの地域でしかできない仕事もあるので、後のキャリアのことも考えて宮城と岩手を拠点に仕事をしようと決めました。
-お住まいの岩手県一関市から仙台に通うとなると大変そうですね。
そんなことはないですよ。一関に住んでいる人って、買い物となると盛岡に行くより仙台に行く人が多いんです。だから仙台に通うこともそれほど大変ではないですし、一関から仙台までは車で1時間弱かかりますが、岩手県沿岸まで行くのには2時間以上かかることもあるので、もともと仙台との距離は遠く感じてないです。慣れって怖いですね(笑)。
-フリーランスになって良かったことはありますか?
一人だと自分のペースで仕事ができることですね。平日にゆっくりできる日があったり、逆に土日にガッツリ働いたりとか。今は結構メリハリをつけて働くことができている気がします。
-休みの日や仕事の気晴らしには何をしているんですか?
基本的にインドアであまり外には出ないのですが、ベガルタ仙台が好きなので動画で観戦したり、仙台に行ってサッカー観戦したりしていますね。あとは、週刊誌のゴシップ欄もスポーツ雑誌と同じくらい好きなのでよくチェックしています(笑)。
-今後、挑戦したいことがあれば伺いたいです。
誌面のレイアウトなどを考えるのが苦手なので、最近はそこを勉強しています。文章と写真の見せ方などイメージを同時に考えられるようにならないといけないなと。尊敬する先輩方を見ていると、肩書きはライターだけど、イメージ作りに的確な提案をされている方が多いんです。もっとデザイナーやカメラマンとイメージを共有して、そういったレイアウトなどにも気配りできるようになりたいです。
-最後にクリエイターを目指す方にメッセージをお願いします。
主に大学の後輩へのメッセージになると思うのですが、無駄なことは何一つないので自分から様々なことを学びに行く姿勢を忘れないでほしいです。たとえ大学で学んでいる分野と関係ないところに就職したとしても、大学時代に学んだことがどこかで役に立つかもしれないので、置かれている環境でできることは全力で取り組むことが大切だと思います。
取材日:令和2年1月21日
取材協力:仙台大学
取材・構成:佐藤 綾香
撮影:小泉 俊幸
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郷内和軌
1992年生まれ、岩手県一関市出身。岩手県立一関第一高等学校卒業後、仙台大学体育学部スポーツ情報マスメディア学科に進学。アルバイト等で執筆経験を積み、2015年4月より岩手県盛岡市の制作会社「株式会社ライト・ア・ライト」に入社。地域限定スポーツ誌「Standard」などの制作に携わり、昨年4月よりフリーランスに。趣味はJリーグ観戦。中でもベガルタ仙台の試合は、年に数回の現地観戦を含み、すべての試合を観戦している。